「怖い」「どうせ無理」…親の要求を断れない3つの理由
こんにちは。心理カウンセラーPocheです。
前回公開した記事では、「断っていい」「自分の気持ちを言っていい」ということをお伝えしました。
確かにその通りなのですが……現実には、相手が『親』だった時には、そう簡単にはいかないことが多いです。「断っていい」「自分の気持ちを言っていい」と理解しても、いざ親を目の前にすると出来なかったりします。
すると、出来ない自分を責めたり、出来ないことに悩んでしまったり……。
でも、「できない」のは、あなたのせいではありません。
頭で理解しても「できない」ほどの何かが、あなたの心の中にあるということです。
そこで今日の記事は、「親からの要求を断れない」と悩むあなたに向けて書いていきます。
断れないことで悩むあなたが、もうこれ以上自分を責めてしまいませんように。「断る」という新しい選択肢を持つことについて、納得できますように。そう願いながら記事を書いていきます。
他人に理解されない苦しみ
「親からの要求を断れない」という悩みは、「分からない人」と「わかる人」で真っ二つです。
だからもし、誰かに理解されないとしても、それはあなたのせいではありません。大したことがないから理解されないのでもなければ、些細なことだから理解されないのでもありません。
その苦しみを理解できるかどうかは、どのような環境で育ったか次第なのです。
理解できる人たちとは?
悩みを理解できるのは、親子関係が原因で悩みを抱えていたり、今も親について悩んでいる人たちです。
家庭でのんびり過ごせず、親に気を遣いながら過ごしてきた人たち。親の要求を断ることで、責められたり怒られたり……「断らない方がいい」「我慢してでも引き受けた方がマシだ」という経験をしてきた人たち。
そもそも「断る」という選択肢すら、親から与えられないこともあります。
とはいえ、ひどい環境で育ってきた人たち全てが、あなたの苦しみを理解してくれるとは限りません。
「自分の方がひどい環境で生きてきた」「あなたはまだマシ」と言われてしまうこともあります。
だからこそ、「同じ毒親育ちだとしても、理解し合えないことはある」ということを覚えておいてください。
そうすることで、自分の心を守ることができます。「分かってくれると思ったのに…」という裏切りにも似た悲しみ、「私が今悩んでいるのは、いけないことなのだろうか」という絶望感から、自分の心を守ることができますから。
理解できない人たちとは?
反対に、悩みを理解できないのは、比較的理想的な親子関係の中で生きてきた人たちです。
おそらくその人たちも、何かしら親への不満は持っているでしょう。
「うちも、似たようなもんだよ」「うちの親も、ひどいよ」と、言うことがあるかもしれません。でも、「親の要求を断るのが怖い」と思うようなしんどい環境では育っていないはずです。だから、あなたの苦しみを理解できないのです。
あなたの悩みを理解できない人たちから「断ればいいだけ」「断らないあなたも悪い」「話し合えばわかる」と言われることがありますが、それはその人たちが断っても許される家庭環境で育ってきたからです。
断っても親が受け入れてくれたり、話し合いで分かり合える親を持っているからこそ、そのようなことを平気でアドバイスできてしまいます。
(言われた側にとってみれば、アドバイスではなく「親の要求を断れない自分への否定」でしかないのですが……)
時には、「親の要求を断るなんて可哀想だ」「親の気持ちになってみたら?」と言われることも、あるかもしれません。
このようなことを言われると、まるで自分が親不孝者と言われているかのような、なんとも言えない気持ちになってしまうこともあるでしょう…。
でも、このような言葉を言われた時には、「この人には、分からないのだな」と思ってみてください。
「そうするしかないあなたの気持ち」が、その人には分からないだけの話です。
相手が理解できないだけで、あなたは何も悪いことをしていません。あなただって本当は、もっと信頼し合える親子関係を望んでいたはずです。それが叶わなくて、一番苦しんでいるのは、あなた自身のはず。
だから…
「親の要求を断るなんて可哀想だ」と言われたら、「親の要求を断りたい、と思うような環境で育った私の方が可哀想だ」と心の中で反論してみてください。
「親の気持ちになってみたら?」と言われたら、「私の気持ちになってみたら?」と心の中で反論してみてください。
そうすることで、親に対する罪悪感や、「いけないことをしているのでは」という自責から、自分を守ることができます。
親の要求を断れない3つの理由
「親の要求を断れない」と一口にいっても、その理由はさまざまです。育った環境や家族構成、親との関係性によっても、「なぜ断れないのか」という理由は変わってきます。
そこで今回は、特に多くみられる3つの可能性についてお伝えします。
自分がどれに当てはまるかイマイチ分からない…と思った時には、「親の要求を断れない!だって……」に続く文章を考えてみてください。
次のようなイメージです。
「だって…」に続く部分が、あなたが断れない本音の部分です。
(例)親の要求を断れない!……
- だって…そんなこと、許されるわけがない。
- だって…そんなことしたら、後で何を言われるか分からない。
- だって…そんなことしたら、親を悲しませてしまう。
可能性1:怒られる、否定される恐怖
- 断ったら、親に怒られるのでは…
- 断ったら、親が不機嫌になるのでは…
- 断ったら、ひどい言葉を言われるのでは…
- 断ったら、嫌われるのでは…
このように、怒られることや否定されることへの恐怖心から、親の要求を断れないことがあります。多くの場合この恐怖は、子どもの頃、それも小さな頃に植え付けられています。
小さな子どもにとって、親は絶対的な存在です。
自分の衣食住を握っているのは、親。さらには、自分より何倍も大きな体、抵抗できないほどの強い力……。そのような相手から怒られたら、怖いに決まっています。
それだけではありません。
「嫌われたり、見捨てられたら、一人では生きていけない」という、命に関わる恐怖さえ味わいます。
だからこそ、この時に植え付けられた恐怖というのは、とても大きな恐怖として、大人になって影響を及ぼすのです。
「まだ親が怖いなんて」「もう大人でしょう?」と、他人は呆れるかもしれません。
でも、精神面で植え付けられた恐怖というのは、そう簡単に消えないのです。
だから、「まだ怖くて当然だ」と、自分の感覚を認めてあげてください。
大人になっても怖いと感じるほど、当時のあなたは恐怖を感じていたということです。
「まだ親が怖いなんて…」と自分を責めそうになってしまったら、「そのような環境で生きてきたなんて、子どもの頃の私は頑張った」と過去の自分を認めてあげてください。
あなたは、何も悪いことをしていません。
可能性2:悲しませることへの罪悪感
- 断ったら、親が悲しむのでは…
- 断ったら、親が困るのでは…
- 断ったら、親は傷つくのでは…
このように、親を悲しませることへの罪悪感から、親の要求を断れないことがあります。このような罪悪感を抱く人の多くは、子どもの頃から「親のため」に頑張って生きてきた人たちです。
自分のことよりも親のことを考えて生きていたり、「自分がどうしたいか」より「親がどうしてほしいのか」を優先して生きてきた可能性があります。
…と書いてしまうと「親のことを考えるのがダメなのか」とモヤモヤする人がいるかもしれませんが、そうではありません。あなたは親のために、たくさんのことを我慢したり、親を喜ばせるためにたくさん頑張ってきたはずです。
詳しくは後述しますが、断ることへの罪悪感が強い場合には、「断ってもいい」「断るのは悪いことではない」とあなた自身が納得することが大切です。
そのためにも今は、「1つの事実として、自分より親を優先してきた人ほど、親に罪悪感を抱きやすい」ということを知ってもらいたかったのです。
※親に罪悪感を強く抱くケースにおいては、子と親の立場が精神的に逆転している可能性があります。親子逆転については【>>過去のブログ】より
可能性3:過去の経験からの諦め
- 断っても、どうせ分かってもらえない。
- 断っても、説得されるだけで意味がない。
- 断ったところで、聞き入れてくれるわけがない。
- 断るなんて、時間の無駄だ。
このように、「どうせ断れない」という思いが強く出るケースがあります。
過去の親との経験から「どうせ断れない」と知っているからこそ、断ること自体が無意味に感じます。意味がないと知っているからこそ、「断りたいけど、断らない(時間の無駄だし、傷つくだけだ…等)」ことがあるのです。
詳しくは後述しますが、この場合の対処法は主に2つです。
1つめは、「断っても意味がない」ということを自分自身が納得すること。
自分のせいで断れないのではなくて、相手が「断ることを許してくれないのだ」ということに納得する必要があります。
自分のせいではなく問題が親側にあると知ることで、断れるようになるケースはとても多いです。どうせ親は受け入れてくれないと諦めたからこそ、親がなんと言おうと「従わない」を貫くことで、結果的に断れることがあります。
一方で、親に従い続けなければいけない…という大きなリスクを伴いますが、「断わる」という選択肢を捨てて「断らない」ことに納得して生きていく人たちもいます。
※それが本人にとって、良い・悪いということは置いておいて、親への諦めがあるケースにおいて「断る」ということはそれだけハードルの高いことなのです。
2つめは、「だからこそ断る」と強く思うこと。
正直なところ、このタイプの親を子どもが説得するのは非常に難しいです。
それは、このタイプの親が「子どもが親の言うことに従う」以外の選択肢を持っていないことが多いからです。
従うのが当たり前だと思っている場合、「断る」という手段を認めません。
でも、だからこそ断るのです。
説得が通用しない相手だからこそ、できるのは「なんとしても断ること」です。「できない」「無理」という態度と姿勢を貫き続けることで、親が諦めることがあります。これは、理解し合えない相手だからこその方法です。
……と書くのは簡単ですが、現実には「よーし、断ろう」とは思えない人もいるでしょう。
諦めた物事に、再び挑戦するというのは、ものすごく勇気がいることだからです。自分の心が傷つくリスクも伴います。
もしあなたもその一人なら、今の段階では「こういう方法がある」ということを知っておくだけでいいです。
知っておけば、いざという時に行動できます。
「この親には説得しても意味がない」「どうせ分かってもらえない」という親の本質を見抜けるあなただからこそ、必要な時に、必要なタイミングで動ける日が来ます。
だから、今は「こういう方法がある」「今、無理に動く必要はない」「タイミングがくれば、動ける」ということだけ信じてみてください。それだけでいいです。
あなたも、断っていい
断るメリット・デメリット
毒親やアダルトチルドレン、親子関係に関する書籍や発信では、「あなたも断っていい」「あなたも自由に生きていい」ということが書かれています。
たしかに、それはその通りです。私自身も、そう思います。
ですが…
「それができないから困っているんだよ!」というのが、正直なところではないかと思います。
「断っていい」と言われて断れたら、あなたは今、こんなにも苦しんでいないはずです。悩んでいないはずです。
「自由に生きていい」と言われて自由になれたら、あなたは今、こんなにも疲弊していないはずです。
では、なぜ「断れない」のか…。
それには、断ることにはメリットだけではなく、デメリットがあるからです。
怒られること、嫌われること、責められること、否定されること…何をデメリットと感じるかは、人それぞれ違います。
いずれにせよあなたは、「断ることのデメリット」について、苦しいくらいに痛感しているのではと思います。だからこそ、「断りたいけれど、断れない」という悩みに苦しめられます。
「断りたいのに断れない」から抜け出す第一歩は、「断っていい」と強く信じること。
さらには「断った方がいい」と、納得することです。
そのためには、断るデメリットよりも、断るメリットが勝つ必要があります。
これらについて、「良いイメージ(メリット)」を膨らますことができれば、断る勇気が強固なものとなっていきます。
- 断ったら、どんな良いことがあるのか。
- 断ったら、あなたの日々がどう変わるのか。
- 断ったら、あなたと親の関係はどう変わるのか。
たとえば…
親と会う約束を断るのであれば、「断ったら、親と会うはずだった時間で〇〇しよう」と思ってみる。
※断った後の予定を立ててしまうことで、「理由があるから断る」と思うことができ、断る罪悪感が減らせます。
親に「お金を貸して欲しい」と言われて断るのであれば、「貸すはずだったお金で、自分に〇〇を買おう」と思ってみる。
※金銭的に余裕がない場合は、無理に自分に使う必要はありません。でも、「まずは自分に使っていい」という思いを持ってみてください。
親に「こうした方がいい」と言われたことを拒否したり断ったりするのであれば、「自分の気持ちを叶える」と思ってみる。
※親の意見を断るだけではなく、「自分の意見を優先すること」「自分の気持ちに従って選択すること」もセットにすることで、だんだんと親より自分の考えを優先できるようになっていきます。
どちらを選んでも、自分を責めないでおく
断れるのが良いことで、断れないのが悪いこととは限りません。
断るストレスがあまりに大きすぎる場合には、断ることで、今の生活が成り立たなくなるほどの精神的ダメージを味わうこともあるからです。だから、誰かに言われて、あなたが納得できないままに、行動を決めないでおきましょう。
あなたのストレスや心の傷を知っているのは、他の誰でもないあなた自身です。
だからこそ、断るのも、断らないのも、決めるのはあなたです。その権利は、誰にも譲らないでください。
人にとって一番苦しいのは、否定されることです。
自責も、自分を否定するのと同じダメージを心に負います。
断るとしても、断らないとしても、大切なのは、自分を責めないこと。
このことさえ覚えておいていただければ、どんな選択をしても、自分を責めて苦しむことはありません。どんな選択をしても、「それでよかった」と思えるようになっていきます。