【NPD】自己愛の強すぎる母がもつ「3つのD」 〜生きづらいのはあなたのせいではない
こんにちは。心理カウンセラーPocheです。
今日の記事は、自己愛の強い母親がもたらす子どもへの影響についてです。
- 「そんなことはなかった」」「そんなことは言っていない」と、都合の悪い事は平気で嘘をつく
- あなたが親に意見を言うと、「真面目すぎる」「神経質」「繊細」といった言葉で批判する
- 親を責めると、「冗談も言っちゃダメなの?」「ユーモアのセンスがない」といった言葉で責任転換してくる
- 親に反論すると、「そんなつもりではなかった」「そんなこと言われたら悲しい」など急に被害者ぶる
…このような親を持つ、あなたに向けて書いていきます。
いわゆる「毒親」と呼ばれる親の多くは、自己愛の強すぎる人々です。
このように書いてしまうと「自己愛=悪いもの」と思われるかもしれませんが、自己愛そのものは悪いものではありません。むしろ必要なものです。
ですが、毒親のもつ自己愛は理解しがたいほどに極端な形で子どもに悪影響を及ぼすことがあります。
ほどほどの自己愛は必要
「今日の私は可愛い!」と鏡に向かって言うことや、なにかが成功した時に「頑張った!」「できた!」と自信を持つこと、不安な時に「自分ならできる。大丈夫」と自分を信じることは、自尊心を高めることに役立ちます。
これらは、生きていく上で必要な自己愛です。
ですが、この自己愛のメモリが上がった時、自己愛は「自己中心的」なものへと変わってしまいます。
子どもを苦しめる「重度の自己愛」を持つ親
子どもを苦しめるのは、必要な範囲での自己愛をはるかに超えた重度の自己愛をもつ母親です。
重度の自己愛(=自己愛性パーソナリティ障害)を持つ母親には、2つの特長があります。
1つめ。謝らない
自己愛の強い母親は、基本的に謝りません。自分が悪いとしても、です。
表面上謝ることもありますが、その後に「あなたのせいでこうなった」「あなたが悪い」と責任を押し付けたり、「謝ってあげたんだからもういいでしょ」と開き直ったりします。
「はいはい、すいませんね」「ごめんなさーい」と軽く受け流したり、「そりゃ悪ぅございましたね」とふざけてみたり、心から謝罪するということがありません。
2つめ。誇張する
いつも誰かに注目されようとします。
特別扱いされることを求め、誰かが自分に賛成しないと騒ぎ立てたり、遠回しに責めたり罪悪感を抱かせたりします。
自分が放っておかれたり、ないがしろにされたり、他の誰かより大切にされていないと感じると、途端に不機嫌になります。
これは子どもに対して特に顕著で、「子どもが自分を超えること」「子どもが自分より優先されること」を認められません。子どもは自分の所有物であり、自分を超えることはあってはいけない、あり得ないとさえ思っています。
自己愛の強い母がもつ「3つのD」
自己愛の強い母親が子どもに使う手法は、実によく似ています。
現に、こういった母親を持つ人々を対象にしたグループセッションにおいては、「えっ!それ私も言われた!」「うちだけだと思ってた…びっくり」なんて言葉が飛び交います。「もしかしてあなたと私のお母さん、一緒?」と、クライエント同士が冗談を言う場面も珍しくありません。
それほど、よく似た傾向が見られるのです。
- Deflectionー回避
- Denialー否定
- Dramaードラマ(脚本)
自己愛の強い母親が使う手法は、上記の「3つのD」で表現することができます。
この記事では3つのDの手法について、お伝えしていきます。
全く同じ出来事ではないにしても、「こんなこと、私にもあったかもた」というものが見つかるはずです。
1.Deflectionー回避
自己愛の強い母親は、自分を批判されることを極端に嫌います。
「自分のイメージ」を誰にも傷つけられたくないのです。特に、子どもには。
こういった母親が得意とするのが、批判の矛先を自分からそらすことです。
自分の発言や行動を批判された時でさえ、自己愛の強い母親は批判の矛先をそらします。例えば、こんな風にです。
Aさんは、母親の言葉によって、今まで自分がどれだけ傷つき悲しんだか勇気をもって伝えた。
でも、母親は、Aさんの気持ちを受け止めたり、これまでの自分の行いを謝罪するのではなく、Aさんを責め立てた。母親は驚いた後、すぐに呆れたような表情になり、「そんな言い方はないんじゃない?」「もういい歳して、今さら…」とため息をついた。それでもAさんが引かないとわかると、「あなたに酷く傷つけられた」「あなたは、私が悪い母親のように言うのね」「全部私が悪いっていうの?」と責め立てた。
Aさんは「お母さんには感謝している。でも、傷ついたこともあった。私の容姿や能力を馬鹿にし続けたこと……そのせいで私は今も、人間関係で苦しんでいて……」と説明したが、母親は泣きながらAさんの言葉を遮った。「どこで育て方を間違えたのかしら。お兄ちゃんは、あんなにいい子に育ったのに」と。母親が泣いたのをきっかけに、そばにいた父親や兄も一緒になってAさんを責めた。
その様子をどこか冷静に見ながら、Aさんは「子どもの頃から、いつもそうだった」と気づいた。母親が泣いたら、自分が悪者になって話は終わり…。これがいつものパターンだった。
Aさんは、子どもの頃からずっと、母親に傷つけられた被害者でした。そのことに気づいた時、Aさんは母親に自分の気持ちを打ち明けたいと思いました。
でも、自己愛の強すぎる母親は、Aさんの気持ちを受け止める器を持っていませんでした。Aさんの気持ちを理解しようとすることはなく、「Aさんによって自分が傷つけられた」と被害者ぶり、話の矛先を変えたのです。
この後、Aさんが罪悪感に押しつぶされそうになったことは、言うまでもありません。
自己愛の強い母親の関心は、子どもではなく「自分」にあります。
子どもがどう思っているのかよりも、自分がどう感じたのかが重要です。
子どもがなぜそうしたのかを考えるよりも、それによって自分がどう感じたのかの方が重要なのです。
だから子どもは、自分の価値を見失います。
大切にしてもらえるはずの親から蔑ろにされてしまうからです。
すると大人になった時、生きている意味がわからなくなります。自分の価値がわからなくなります。誰も自分を大切にしてくれない、と思うこともあります。
2.Denialー否定
自己愛の強い母親は、自分が間違っていることを認めようとしません。
自分が正しいと思っていることを示すためなら、どんな事だってします。嘘も平気で言います。
約束したことを「約束していない」と言い、貸したものを「貸してない」と言い、言ったことを「聞いていない」と言い、やったのに「やっていない」と言い張ります。
自分だけが嘘をつくのならまだしも、「真実」を伝えたあなたを嘘つき呼ばわりすることもあります。このようにです。
Bさんは、「車検のお金がない」という母親に、10万円貸したことがあります。
そのお金は来月返すということでしたが、翌月になっても返してくれないので、Bさんは母親に「貸した10万円を返して欲しい」と伝えました。すると母親は、「そんなお金は借りていない!」と言い出しました。
「あんたの勘違いだ」「あんたが使ったんだろう。私は知らない」と言い張ります。
そこで、Bさんはお金を引き出した時の通帳を見せました。そこには、手書きで「母の車検代、10万円建て替え」とメモされていました。それを見た母親は、開き直ります。「たかが10万円じゃない。あんたを育てるのにこれまでいくらかかったと思ってるの?」「嫌なら、貸さなきゃよかったじゃないの」とBさんが悪いかのように言いました。
父親からも「お母さんを怒らせるな」と言われてしまい、Bさんは困ってしまいました。これは、始めてのことではありません。こんなことがこの先も続くと思うと、将来が不安になってしまいました。
自己愛の強い母親はあまりに堂々としています。まるでBさんの母親のように。
だから子どもも、「私がおかしいのか?」「私の気のせいだったのか」と納得するしかないことがあります。それが、「嘘」にもかかわらず…。
厄介なのは、周囲までもが嘘を信じてしまうことです。
あまりに堂々と振る舞うので、「嘘だ」ということに周囲が気付けないことがあるのです。その結果、まったく悪くない子どもが「悪者」に仕立て上げられてしまうこともあります。
このような母親を持つと、子どもは自分に自信が持てなくなります。
人間関係でうまくいかない時、「自分が間違っているのではないか」「自分がおかしいのではないか」と自分側の落ち度を探しすぎてしまうからです。
家庭内で理不尽なことを受け入れなければいけなかったせいで、「対人関係の理不尽な出来事」でさえ受け入れてしまうようになります。自分のせいではないことを「自分のせいだ」と思い込まされてしまいます。
そのせいで、自己愛の強すぎる人たちの標的になってしまいます。
子どもの頃は母親から、成人してからは「母親のような性格の他者」によって苦しめられてしまいます。
自己愛の強い人たちというのは、「自分を攻撃しない優しい人」を見分けるのが非常に上手いのです。
3.Dramaードラマ(脚本)
自己愛の強い母親は、自分の脚本のようなものを持っています。
その脚本の中身は、こうです。
- 私は常に正しい。でもあなたは、いつも間違っている。
- 私は完璧。でもあなたは、欠点だらけ。
次に挙げるのは、自己愛の強い母親を持つ3人の例です。
Aさんの母親は、「いつも私が正しい」と言わんばかりの態度だった。自分のミスを誤魔化すためなら「白いものを黒いという」のも平気なようだった。そんな人だった。
ある時Aさんは勇気をもって、母親の態度について冷静に指摘した。その時も母親は、「はいはい、こんな母親ですいませんねぇ」とふざけたともいえる態度で適当に謝るだけだったのだ。
Bさんのお母さんは、いつも大げさだった。それはまるで、自分に注目を集めるかのようだった。
ある時Bさんは、母親とちょっとしたことで口論になった。すると母親はそのことを父親に伝え、いかにBさんが酷いことをしたのかについて、あることないこと大げさに吹聴した。
Cさんは3年生の時に、足をねん挫したことがある。でも母親はろくに心配もせず、過去に自分が負った「ひどい怪我」について話し始めた。
Cさんの母親はいつもそうだった。辛かった話をすると「私の方がもっと辛いことがあった」と言い、傷ついた話をすると「私なんてもっと傷ついたことがある」と言うのである。
自己愛の強い母親が他人を判断する基準は、自分を支持するかどうかで決まります。
母親の言うことに賛成するなら、「いい子」「いい人」です。
母親の言うことに反対するなら、「ダメな子」「悪い子」「最低の人間」「親不孝」と罵られます。
自己愛の強い親と一般的な親の違うところは、子どもが自分に反抗した時の行動です。
一般的な親も、必要があれば子どもを叱ります。
ダメなことはダメと、伝えます。
でも、自己愛の強い親は「子どもが“この私の”言うことを聞かなかった」という事実に耐え切れず、傷ついた獣さながらに全力で子どもを攻撃します。
自分の行動や言葉が、子どもにどれほどの影響を与えるか一切お構いなしに、責め立てます。
その目的は「子どものため」ではなく、自分の欲求や願いを満たすため。自分の思い通りに子どもを動かすためです。
これはもはや「叱る」ではなく、「攻撃」としか言いようがありません。
「親の都合」で勝手に攻撃される
自己愛の強い母親は、自分の気分で子どもを攻撃します。
自分が何かで不安定になっていたり、落ち込んで自信を無くしていたりする時に、「わざわざ子どもの欠点を探して」批判を繰り出します。
あなたをこき下ろすことで、自分が優位に立とうとするのです。
あなたが楽しそうなら、わざと落ち込むような話題を投げかけます。
あなたが幸せそうなら、「あんたなんか」「人生そんなうまくいかない」とあなたの気分を下げようとします。
あなたが自信に満ち溢れていたら、「それくらいで」「調子に乗るな」と自信をへし折ろうとします。
子どもを応援したり、一緒に切磋琢磨するのではなく、足を引っ張るライバルのように邪魔をします。
あなたの目は小さい、形が変だ、鼻が大きすぎる、低すぎる、みっともない、太りすぎている、痩せすぎている、脚が太い、肌が汚い、勉強ができない、要領が悪い、何をやってもダメ、考え方がおかしい……。
このようにあらゆる言葉を使って、子どもの心を傷つけます。
けなすだけではなく、あなたをおだてて達成できないような理想を押し付け、「なぜできないの!?」と強く批判することもあります。
あなたがその先どれだけ成功しようとも、「あの時、あなたは達成出来なかった」と何年も何十年も言い続けます。
ふつうの親は「できたこと」を覚えて子どもを励ましますが、自己愛の強い親は「できなかったこと」を覚えて子どもの自信を失わせるのです。
私も母親と一緒…?
ここまで読んでくれた人の中には、「自分にも当てはまるところがある」と感じたり、「私も親と同じなのではないか」と不安になっている人もいるかもしれません。
大切な事なので、最初にお伝えしておきます。
あなたは違います。大丈夫です。
自己愛の強すぎる人は、気付きません。認められません。だから不安になりません。
つまり、この記事を今こうして開いている時点で、あなたはあなたの親とは違います。
さらには、ここまで読めたあなたの自己愛は正常です。
自己愛の強すぎる人なら、ここまで読むことさえできません。あなたが「自己愛」の加害者であるならば、このページを離れてしまっているはずです。
読みながら不安になることがあるかもしれません。
その時には深呼吸して、「私は違う。だって今こうして向き合えているのだから「ここまで読めているのだから」と自分自身を信じてあげてくださいね。
大丈夫です。
自己愛の強い母親に振り回される子どもたち
- 母親は、子どもの幸せを願っている
- 母親は、母性をもっている
- 母親は、本当は子どもを愛している
このように受け継がれている「母親神話」の影響で、自己愛の強い親に育てられた『子ども』はいつまでも頑張り続けてしまいます。大人になっても、です。
自分が頑張れば関係が修復できるかもしれない、もっと愛情深くなってくれるかもしれない、ふつうの親子のようになれるかもしれない…という期待を持ち続けます。
おそらくこの願いは、あなたが自分で自覚している以上にとても強力です。人生を狂わせるほどの力を持ちます。
自己愛の強い母親との付き合い方
母親があなたを責めたのも、あなたのせいにしたのも、あなたの望む形で愛情を示してくれなかったのも、あなたのせいではありません。
誰がなんと言おうと、子どものせいではありません。
このような事実に行き着いた時、「では、なぜ私の母親はこんなふうになってしまったのか」と疑問を抱くことがあります。
あなたの母もまた競争心の強い母親に育てられたのかもしれないし、愛されてこなかったのかもしれないし、常に欠乏間を感じて生きてきたのかもしれません。
でも、母親が苦労した人かもしれないということと、あなたが受けたものは別です。
母親が可哀想だからといって、あなたに何をしても良いわけではありません。
母親も苦労したからといって、あなたも苦労しなければいけないなんてことはありません。
母親の事情を理解する前に、自分が受けた心の傷を理解してあげてください。
過去に何があって、それによって今どれだけ苦労しているのかという、自分側の事情を理解してあげてください。
自己愛の強い母親は、実は自分に自信がない
自己愛の強い母親をもつと、「母親はいつも自信満々」「母親はいつも自分が一番」と感じることもあるかもしれません。
確かに自己愛の強い人というのは、そのように見えることがあります。
自信満々だったり、自慢ばかりしていたり、他人の批判ばかりしているからです。
…でも実際は、違います。
彼らの心の中は、不安と恐怖でいっぱいです。言葉や態度とは裏腹に、自信喪失しています。
その不安や恐怖をかき消すために、他人の賞賛や注目を集めようとするのです。
自己愛の強い母親の影響が顕著に出るのが、母娘の関係です。
娘は自分にスポットライトが当たるたび、「母親が割り込んできて邪魔をする」ことを早くから学びます。
娘が楽しそうだと母親がつまらなさそうだったり、娘が褒められると「それくらいで」と自信を失わせるからです。
それだけではありません。
自己愛の強い母親は、娘の成功を自分の手柄のように横取りします。
「あなたが成功したのは私のおかげだ」と言い張ります。
そしていつのまにか母親のために生き、母親の願いを叶えることが、「自分の人生だ」と信じ込まされます。
疑問を持つこと、自分の人生を生きようとすることさえ許されないこともあります。
親に不幸があった時には、「あなたのせいだ」「あなたさえいなければ」と子どもに責任転換します。
このように良いことや成功は全て「親のおかげ」、一方で親に起こる不幸や悪い事は全て「子どものせい」にしてしまうのです。
このような自己愛の強い母親を持つと、子どもは「自分が愛されていない」「親でさえ愛してくれないのだから、誰も自分を愛してくれない」と信じ込むようになります。
「母親について悪く言うなんて…」とためらうクライエントは多いです。医師やカウンセラーから、「親を悪くいうものではない」と諭されてしまうこともあるでしょう。
でも、過去に受けたことによって、大人の今どのような影響が出ているのかを知ることは、母親のせいにすることでも、母親を非難することではありません。
あなたが前に進むために、必要な事です。
どのような影響が受けたか分からなければ、「何をどう対処すればいいのか」は分からないのですから。
もしあなたの母親が自己愛の強い人であるならば、今あなたが感じている生きづらさや、人間関係での悩みには、「過去の何か」が関係している可能性があります。
自分の性格や考え方を否定したり、嫌いになったりする前に、「過去に何かなかったか」を振り返ってみてください。
この記事をここまで読めたあなたなら、「あなたのせいではないこと」「過去の言葉に苦しめられていること」があるはずです。