【母親神話に苦しむ子ども】子どもを愛さない母親はいない!…というわけではない
こんにちは。心理カウンセラーPocheです。
今日のブログは、母親神話について。
母親について誰かに相談した時、「親はあなたを愛しているはず」「お母さんにも事情があるのでは?」と諭されたり、「せっかく育ててくれたのにそんなこと言うもんじゃない」と否定的なことを言われてしまうことがあります。
そのせいで、母親を悪く言うこと、母親に反抗する事さえ「いけないこと」「親不孝だ」と感じてしまう人がたくさんいます。
本題に入る前に、大切なことをお伝えしますね。
このブログの目的は、親を責めることではありません。
子どもを産み、親になったあなたを批判することではありません。
親との関係に悩む、大人になった「あなた」に向けて書いています。
すでに親になった人もいらっしゃるかもしれませんが、この記事は「あなたと子ども」についてではなく、「あなたとあなたの親」との関係について考えながら読んでいただければと思います。
母親神話とは
- 母親はみんな、愛情を持っている
- 母親はみんな、子どもを愛している
- 母親はみんな、優しさをもっている
- 母親はみんな、子どもの幸せを願っている
- 母親はみんな、偉大だ
これらが、いわゆる「母親神話」の考え方です。
母親神話が間違っている、と主張したいのではありません。
このような思想は日本だけではなく世界各国で深く根付いていますし、「母親は子どもを愛するものだ」という考え方に救われる方もいます。
この考え方に救われる方がいるなら、それはそれで良いのです。
ここで私がお伝えしたいのは、何が良くて何が正しいのかということではありません。
長年カウンセラーとして働いている中で、母親神話に苦しむ親子を大勢みてきたからこそ、「母親神話を受け入れられなくてもよい」ということをお伝えしたかったのです。
あなたが母親神話に苦しむ一人なのだとしたら、母親神話を信じる必要はありません。母親神話に当てはまらない親も、現実に存在するからです。
出産は、母性が目覚める「魔法のスイッチ」ではありません。
子どもを妊娠して産んだだけで母性が芽生え、子どもとの深い絆が自動的に結ばれるということはありません。愛情を育むことも、優しさを示すことも、絆を結ぶことも、親の努力なしでは成り立ちません。
母親になれば必ず愛情が芽生えるなんてことは、あり得ないのです。
母親は子を愛するもの…愛してくれないのは子どものせい?
「母親は無条件に子を愛するもの」という神話が根付くことで、親から愛されない子どもは「私が悪いのでは」と自分を責めてしまいます。
「親は子を愛するもの」という大前提のもと、到底理解し合えない親と話し合うように勧められることもあります。
繰り返しになりますが、「母親神話を信じてはいけない」ということではありません。
母親神話によって救われる人がいるのも、事実です。
それによって心が軽くなるなら、それはそれでよいのです。母親神話によって心が救われるということは、親があなたに与えた愛情に気づき納得できたということですから。
ここで私がお伝えしたいのは、「子どもを愛せない親がいる」という、もう一つの事実についてです。
愛せない親が悪いとか、愛されない子どもが悪いとかそういうことではなくて、「子どもが望む形で愛せない親がいる」ということなのです。
母親神話に出てくるような母親もいれば、そうではない母親もいます。
そしてそれは、子どもであるあなたのせいではありません。
もしもあなたが母親神話に苦しんでいるのなら、「母親神話は信じなくてもいい」ということをお伝えしたくてこのようなお話をさせていただきました。
母親神話がもたらす弊害
- 誰かに自分の母親について相談したが、分かってもらえなかった。
- 母親のことでモヤモヤしているが、「大人になってそんなことを言っているのか」と言われそうで、他人に話そうと思えない。
- 親のことを悪く言ってはいけない気がする。
このような思いから、親への思いを押さえ込んでしまう人がたくさんいます。
母親神話を信じている人たちに、「健全な愛情を持たない母親(毒親)」について話すことは、過剰なほどタブー視されています。これは、日本国内に限った話ではありません。
では実際に、母親について誰かに相談したり、母親を悪く言うとどのようなことが起こるのか。
ここではその一例について、ご紹介します。
これらの例を知ることで「私だけではないのだ…」と思えるかもしれません。
友達に相談した場合
この子なら分かってくれるかもと思い、「親の過干渉がつらい」と打ち明けたことがあります。でも、返ってきた答えは、「そんなお母さんに見えないけどなー」でした。さらには「でもさ、あなたのためを思っていってくれてるんじゃない?」「うちなんて、何もしてくれないよ。してくれるだけ羨ましい」と言われてしまい、親を悪く言っている自分を責められているような気分になりました。恥ずかしくなりました。こんなことで悩んでいる自分がワガママなのかと、落ち込みました。
(20代 女性)
仲の良い友達だとしても、親子の悩みについては理解を得られないことがあります。
「もう大人になったら?」「うちも似たようなもんだよ」「うちの方がもっと酷いよ」というように、苦しみを理解してもらえなかったり、親のことを大切にできない人というレッテルを貼られてしまうこともあります。
特に、「過干渉の親」を持っている場合は、周囲にその苦しみが理解されにくく、上記の女性のように「羨ましい」と言われてしまうこともあります。
その結果、自分がおかしいのでは、自分のことを理解してくれる人はいないのではと、自分の本音に蓋をしてしまうことがあります。
ほしいものが与えれず、親の与えたいものだけが与えられる苦しみは、過干渉の親を持つ子どもでなければ理解できないからです。
医師やカウンセラーも理解できないことがある
親子問題に理解がない医師やカウンセラーに相談して、ますます心の傷を深めてしまうこともあります。
例えば、次のよう言葉をかけられることがあるかもしれません。
- 許して忘れましょう
- 過去だと割り切りましょう
- 親を愛さなければ前に進めない
- あなたにも悪いところがあったのでは?
- 親と話し合えばわかるはず
このように「それができたら苦労しないよ…!」と言いたくなるようなアドバイスをもらうことがあります。
誰かに相談するという勇気ある一歩を踏み出した結果このように傷つけられてしまったからこそ、「もう誰にも相談しないでおこう」と固く決意してしまうこともあります。
ここでお伝えしたいのは、あなたにとって「余計なアドバイス」をくれたのは、意地悪な人たちばかりではないということです。
どんなにいい人でも、優しい人でも、あなたのことを大切に思っている人でも、時には「善意で余計なアドバイス」をしてしまうことがあります。
たとえば「親と話し合えばわかるはず」とアドバイスする人は、話し合えない親がいることを知りません。
「親はあなたを愛しているはずだから」とアドバイスする人は、愛情を持たない母親がいることを本当の意味で理解できていません。全ての母親は完璧ではないにしろ、必ず愛情を持っていると信じて疑わない人もいます。
…..では、なぜ他人は、あなたにこのようなアドバイスをあなたにしたのか。
それは、「ただ単にわからなかったから」というのが一番近いのではと思います。
他人はあなたが受けたものを知りません。
あなたがどんな気持ちで頑張って、耐えてきたのかを知りません。あなたを非難するようなアドバイスをしてきた人たちというのは、「あなたのつらさが理解できな人たちだった」ということです。
ただし……
このようなことをお伝えしたのは、あなたを傷つけた人を擁護するためではありません。
相手にも事情があるのだから理解してあげよう、過去のことは水に流そう、と言いたいのでもありません。
あなたの努力が足りないとか、伝え方が悪いとかそういうことではなく、「相手側の問題で理解できなかっただけ」「理解できないからあなたを責めただけ」ということを知ってほしかったのです。
他人が理解してくれないからと言って「これくらいのこと」と抑え込む必要はありませんし、自分を責める必要もありません。
みんなが理解してくれないとしても、あなたがおかしいわけではないのです。
みんなが理解してくれないとしても、あなたが受けたもの、あなたがみたもの、あなたが経験したものは本物です。その時あなたが感じた気持ち、今も感じている気持ちも本物です。
だからまずは、あなたが自分の気持ちを信じてあげてください。
こんなこと思ってはいけない、考えてはいけないと感情をジャッジせずに、そのまま受け止めてみてほしいのです。
頭で理解すること、心で感じること
母親がしたことがあなたの心を傷つけることもあれば、してくれなかったことがあなたの心を傷つけることもあるでしょう。
子どもの頃の経験が積み重なって、母親と会うのが辛いという人、母親が嫌いだという人、縁を切りたいという人もいるかもしれません。
そう感じていいし、そう思っていいのですよ。
あなたが感じた気持ちには、必ず理由があります。だから、自分がどう思っているのかを大切にしていいです。
とはいえ、この記事を読んでくれている方の多くは、頭で理解できても感情がついてこないのではと思います。
もしかすると頭で理解することさえ、ブレーキがかかる方もいるかもしれません。
「こんなふうに考えてはいけない」「親が悲しむ」「親不孝なのでは」「普通の生活を送らせてもらった」というさまざまな感情が入り混じり、あなたに罪悪感を持たせてしまうことがあります。
ですが、これはとても自然なことなので安心してください。
私たちは時に、「頭で理解したこと」と「感情」の両方が対立することがあります。
やっちゃダメと言われていることをやりたくなったり、押しちゃダメというものを押したくなったりするような感覚に近いかもしれません。頭ではやってはいけないと思いつつ、やりたいという感情が抑えきれないことがあるのが人間です。
たった1回失敗しただけなのに、「また失敗したらどうしよう」と怖くなってしまうのもその1つ。
頭では「また失敗するとは限らない」と理解していても、失敗した時の記憶が鮮明に刻まれていると怖くなって身動きが取れなくなってしまいます。
おそらくあなたは子どものころから、「自分が悪い」「自分のせいかもしれない」と思い込んできたのではと思います。
心のどこかで「お母さんが悪い」「お母さんのせい」と思いながら、そう思ってしまう自分を責めてきた人もいるかもしれません。
何かあるたびに自分が悪いと責めたり、どうせ自分を理解してくれる人はいないと自暴自棄になったり、自分の心や体を乱暴に扱ってしまうこともあります。
「ほーら、また!」「だからアンタはダメなのよ」という、親の一言があなたを苦しめているのかもしれません。
何をやっても誰かと比べられ、褒められなかった経験が、生きづらさの原因かもしれません。
あなたの意見を一切聞いてくれない親の「いつも私(親)が正しい!」という態度を受け入れ続けたことが、自信のなさに繋がっているのかもしれません。
あなたが過去に何を受け、それによって今どのような影響が及んでいるのか見つけることは、親を否定する事でも親のせいにすることでもありません。
あなたが親の影響から抜け出し、「自分」として生きていくための一歩なのです。
あなたが自分のせいではないことで、これ以上苦しまないことを願い、このような記事を書かせていただきました。