【毒親育ち】親が「した」ことだけが影響するのではない。見過ごされがちな「しなかった」影響とは
こんにちは。心理カウンセラーPocheです。
今日のブログは、『毒親と毒親育ち』について。次のように感じているあなたに向けた内容です。
- 毒親育ちってどんな人?
- うちの親は、毒親ってほどじゃないような気もするけど…
毒親育ちってどんな人?
「毒親育ち」というのは、毒となるような影響を与える親に育てられた子どものこと、その言葉通り毒親の元で育った人です。
「毒親」という言葉が、日本に広がり始めたのは20年以上前のこと。子どもに暴力をふるう親、暴言を吐く親、性的な行為を強要する親、育児放棄する親、アルコール中毒の親……その当時、毒親と言えば「誰がどうみても酷い親」を指す言葉でした。
そのため、当時の毒親相談の多くは性被害や虐待といった内容が中心でしたが、年月の経過とともに毒親の捉え方は少しずつ変化していき、ここ数年は過干渉・過保護な毒親についての相談が急増しています。
例えば、次のような悩みについての相談です。
- 親のことは好きだけど、一緒にいるとしんどい
- 親が嫌いというほどではないけれど、苦手
- 実家で気が休まらない
- 親と一緒にいると疲れる
- 親には感謝しているけれど、あまり関わり合いたくない
- 親と顔を合わせると、喧嘩ばかりしてしまう
「毒親育ち」というと、親からとてつもなく酷いことをされた人をイメージする人が多いかもしれませんね。
親から暴力をふるわれたり、暴言を吐かれたりすれば、心や体に傷がつくことは誰の目にも明らかです。
ですが、暴言や暴力だけが子どもを傷つけるのではありません。暴言や暴力がなく、比較的恵まれて見える環境で育っていたとしても、心に傷を負うことがあります。
植物に水や肥料を過剰に与え続けると枯れてしまうように、過剰な保護や干渉が子どもの心を壊してしまうことがあるのです。
親がした影響、しなかった影響
- 毒親といえば、子どもに「何かした人」。
- 毒親育ちといえば、毒親から「何かされた人」。
このようなイメージが浸透しているように感じます。
ですが、親がしたことだけが、子どもに影響を与えるのではありません。
親にされたことだけが、大人になって影響を及ぼすのでもありません。
親がした影響と同じく、「親がしなかった影響」も大きなものです。
与えられるべきものが与えられなかったり、すべきことをしてもらえなかったりといった、親が「しなかった」こともまた、子どもの心を傷つけ大人になっても影響を及ぼします。
実は、親がした影響よりも「親がしなかった影響」を受けている人の方が、親の影響から抜け出すのに時間がかかることも珍しくないのです。
それは、今自分が抱えている問題と、親との関連性が見えにくいからです。
- 「親のせいにしているだけでは」
- 「親にはそれなりに育ててもらった」
- 「それほど酷いことはされていない」
このような思いが出てきて、自分のせいではないと納得することの邪魔したり、今抱えている悩みを過去から紐解く弊害となってしまうことがあります。
しなかった影響とは
- 話を聞いてほしい
- 自分を見てほしい
- 認めてほしい
- 愛してほしい
これらは、子どもが抱く自然な欲求です。
理想的な環境であれば、親がこれらの子どもの欲求を満たしてくれます。
親が「しなかった影響」というのは、これらが与えられない影響を指します。
親から与えられるべきものがもらえない状況、心を育てるために必要なものが与えられない状況というのは、子どもの心を不安定にします。
次に挙げるのは、人を信じられないことに悩み、「人を信じられるようになりたい」「人を信じられない自分はおかしいのではないか」と不安になって相談に訪れたOさんの例です。
「人を信じる」ということができません。周囲を見ていると、自分がどこかおかしいのではないか、冷たい人間なのではないかと感じます。
信じて裏切られたらどうしようと怖くなったり、こんなことを話したら迷惑なのではないかと思ったり、言ったところでどうせ分かってくれないだろうと諦めてしまうんですよね。
自分を分かって欲しいし、受け止めて欲しいという思いがないわけではないのですが……友達や恋人に対しても、自分の本心を打ち明けようとは思えません。だから、誰といても気が休まりません。
自己肯定感を高める本を読むと、「自分の気持ちを大切にしよう」とか「あなたの話を聞いてくれる人がいる」と書いてありますが、私、そうは思えません。だって、親でさえ私の話をまともに聞いてくれないんですから。「はいはい、それ今じゃないとダメ?」と面倒臭そうに言われると、話を聞いてもらいたいと思うのが「ワガママなんじゃないか」って思いました。親でさえ聞いてくれないのに、赤の他人が聞いてくれるわけないじゃないですか。
人を信じられないことに悩み、「人を信じられるようになりたい」「人を信じられない自分はおかしいのではないか」と不安に感じていたOさんですが、実は「人を信じられない」のではなく、過去の影響から「人を信じないほうがいい」という思い込みを抱えていました。
「信じないほうがいい」という過去の経験からくる思いが、「人を信じられない」という今の悩みにつながっていたのです。
話を聞いてほしかった時に、話を聞いてもらえなかったこと。助けてほしかった時に、助けてくれなかったこと。自分の気持ちを認めて味方になってほしかった時に、それらを否定されてしまったこと……。
過去の経験の積み重ねが、「人を信じてもいいことがない」「人を信じても、最終的に傷つく」という思いを強化していました。
「親でさえ自分を受け入れてくれなかった」「親でさえ自分を分かってくれなかった」という幼少期の記憶が、「他人もどうせ自分を受け入れてくれない」「他人が自分を分かってくれるわけがない」という諦めにも似た気持ちにつながっていたのです。
Oさんのように、「親がした影響」ではなく、「親からしてもらえなかった」影響に苦しめられてしまう人は少なくありません。
明らかに何かされたわけではないからこそ、人に相談しにくかったり、人に相談したところで理解されにくいという問題も生じます。
「これくらい」と思う必要はない
- 「自分の親を毒親だと思いたくない」
- 「毒親という言葉が苦手」
- 「毒親だと思えない」
この記事を読んでいただいた方の中には、このような人もいるのではと思います。
それはそれで、構いません。
毒親だと思うことで救われたり、あなたが前に進めると思えば「毒親だ」と自分の中で納得すればいいのですが、毒親だと思えないならそのままで大丈夫です。
重要なのは、あなたが「毒親育ちなのかどうか」「あなたの親が毒親かどうか」というレッテルを貼ることではないからです。
毒親育ちの特徴についてここで述べたのは、あなたがもうこれ以上、自分のせいではないことで自分を責めないため。
あなたの何かがダメだから悩みを抱えているのではなく、「過去にあった出来事が原因で悩みを抱えているだけなのだ」ということに気づいたり、あなたを苦しめる言葉を手放すためなのです。
繰り返しになりますが、暴力や暴言など「親がしたこと」だけが影響を及ぼすのではありません。
子どもが必要とするのは、物質面だけではありません。心の面でも親に育ててもらう必要があるのです。精神的に与えられるべきものが与えられないこと、「親がしなかったこと」も影響を及ぼします。
- 「うちの親は、毒親かもしれない」
- 「私は、毒親育ちかもしれない」
- 「毒親ってどんな人?」
このように感じている初期の段階ではまず、そのことについて知っておいていただければと思います。