アルコール依存症の親に育てられて:他人の顔色を気にしない生き方
こんにちは。心理カウンセラーPocheです。
今日の内容は、アルコール依存症の親を持つあなたに向けたものです。
アルコール依存症の親のもとで育つと、子どもはその環境に適応しようと、自然に自分を抑える術を身につけます。
親の怒りを避けたり、機嫌をとったりする行動が「生きるために必要なスキル」になってしまうからです。
たとえば、アルコール依存症の親を持つ人たちがよく語るのは、次のような過去の出来事です。
- 親が酔って機嫌を損ねないように静かにしていた。
- ちょっとした一言が親の怒りを引き起こし、自分を責めた。
- 甘えたり頼ったりすることで、かえって責められるのではないかと恐れていた。
こうした経験の中で子どもは、「自分が悪いから怒られた」「もっと頑張らなきゃ」と感じるようになります。自分のせいで、「悪いこと」が起こっていると思い込まされてしまいます。実際は、そうではないのにもかかわらず…です。
これこそが自己否定の始まりです。
実際には、あなたの親の機嫌や怒りは、あなたのせいではありません。
親の感情をコントロールする責任は、本来子どもである「あなた」にはありませんでした。あなたは、悪くなかったのです。
「あなたの性格のせいではない」
大人になってからも、人間関係で困難を感じることがあるかもしれません。
例えば、次のような状況です。
「私は、人の顔色を常に気にしてしまいます。職場でも、誰かが少しでも不機嫌そうな顔をしていると、『私が何かしたのでは?』と不安になります。
小さい頃、父がアルコールを飲むと機嫌が悪くなり、母や私に怒鳴ることがありました。母はいつも『お父さんを怒らせないようにしなさい』と言っていたので、私は常に『どうすれば機嫌を損ねないか』を考えながら生きてきました。今でも、人のちょっとした表情や態度の変化に敏感で、何も悪いことをしていなくても罪悪感を抱いてしまいます。」
「自分の意見を言うのが苦手です。誰かと話すときも、『こう言ったら怒られるのでは?』『嫌われるのでは?』と考えすぎてしまい、つい相手に合わせてしまいます。
父がアルコール依存症で、機嫌が悪いと怒鳴ったり物を投げたりすることがありました。母も私も逆らわないように気をつけていて、家ではいつも『波風を立てないこと』が最優先。だから、自分の気持ちを伝えるのは『危険なこと』だと刷り込まれてしまったのかもしれません。今も、ちょっとしたことで緊張し、自分の考えを言えずに後悔することが多いです。」
「電車の中や職場で誰かが言い争っているのを見ると、ものすごく動揺してしまいます。関係のないことであっても、心臓がドキドキして、逃げ出したくなります。
私は、父が酔って母に怒鳴る姿を何度も見てきました。小さい頃は、それを止めることもできず、ただ怯えて隠れるしかありませんでした。だから今でも、誰かが怒鳴っている声や、険悪な空気を感じると、『また始まるかも』と過去の記憶がよみがえってしまいます。自分には関係のないことだとわかっていても、どうしても緊張してしまい、その場を離れたくなります。」
これらはすべてあなたの性格が悪いわけではなく、過去の影響が今のあなたに影響を与えているだけです。
幼少期に親の顔色をうかがう生活をしていたことが、他人との関係にも同じパターンを持ち込ませているのです。
では、どうすれば「同じパターン」から抜け出せるのか。
そのために大切なのは、「過去の影響」を理解することです。
何が起こっていて、それによってどのような影響が及ぼされているのか…これを知るだけで、今の自分を責める気持ちが少しずつ和らいでいきます。
他人の顔色を気にしない生き方のために
アルコール依存症の親を持つ人が、必ずと言っていいほど抱えるのが「他人の顔色が気になってしまう」という苦しみです。
子どもの頃に身につけた「その場所で生き抜くためのスキル」が、大人になった今、あなたを苦しめてしまっているのかもしれません。
ここでは「子どもの頃に身につけたスキル(他人の顔色を伺う、伺ってしまう)」を手放す5つの方法をご紹介します。
…まず、心に留めておいてほしいのは、「ここに書いてあることを即実行できるわけではない」ということ。
ですから、「そんなことできない」「わかっているけど、できない」と感じたとしても、全く問題ありません。「こんな方法もある」「こんな考え方もある」と知ってもらうだけで十分です。アルコール依存症の親を持つ子どもの心の傷は、それほど深いからです。
1. 「過去の影響」を見つめる
次に挙げるのは、カウンセリングを受けた人の実際の感想です。
「私は、子どもの頃から親の機嫌を常に気にしていました。父はアルコール依存症で、機嫌が良いときは優しいのに、お酒が入ると些細なことで怒鳴ったり暴れたりしました。母は『お父さんを怒らせないようにね』と私に言っていて、家の中では常に『どうすれば怒らせずに済むか』を考えていました。
そのせいか、大人になった今でも、周りの人の表情や態度の変化に過敏に反応してしまいます。職場でも、上司の顔色をうかがいすぎたり、同僚が不機嫌そうにしていると『私が何かしたのでは?』とすぐに不安になります。本当は関係ないことなのに、無意識のうちに『相手の機嫌は自分次第』と思い込んでしまっている気がします。
メールカウンセリングを受ける中で、『親の感情をコントロールしなければならない』と思って生きてきたことに気がつきました。今の私は、もう父の機嫌を取る必要はないし、他人の感情も私の責任ではないと、少しずつ意識できるようになってきました。まだ不安になることもありますが、『私のせいじゃないかもしれない』と考えられるようになり、前よりも気持ちが楽になってきています。」
アルコール依存症の親を持つ子どもは、親の予測不能な行動に対応するため、常に警戒心を抱えながら育ちます。
この過剰な適応力は生存に必要なものでしたが、大人になった今でも「他人の機嫌が自分に関係する」という誤った思い込みとして残ります。
だからこそ、幼少期の経験が現在の自分に影響を与えていることを知ることが必要です。
これは、「自分のせいではない」と理解するための第一歩になります。
親の感情に振り回される生活をしていた人は、「相手の感情をコントロールしなければならない」という思い込みが身についていることが多いからです。ですが、この認識を持つことで、自分を責める癖から少しずつ解放され、冷静に自己分析ができるようになります。
2.「自分のせいではない」と知る
次に挙げるのは、カウンセリングを受けた人の実際の感想です。
「私は、幼い頃から親の機嫌に振り回されながら育ちました。母はいつも忙しく、少しでも手を煩わせるとイライラした顔をして、『もう!なんでこんな簡単なこともできないの?』と怒られていました。私はそれが怖くて、なるべく母を怒らせないように気を使いながら生活していました。
そのせいか、大人になった今でも、誰かが不機嫌な顔をしていると『私が何か悪いことをしたのでは?』と真っ先に考えてしまいます。職場で上司がピリピリしていると、自分に何か落ち度があったのではないかと不安になり、友人が返信をくれないと『嫌われたのかもしれない』と考え込んでしまいます。
でも、月に1回メールカウンセリングを受けるようになって、『他人が不機嫌なのは、本当に自分のせいなのか?』と考えるように意識しました。すると、単に相手が仕事で忙しかったり、疲れていたりすることも多いと気づきました。私はずっと、相手の機嫌を自分の責任として背負い込んできたんだなと感じました。まだ完全に気持ちを切り替えられるわけではありませんが、『自分のせいじゃないかもしれない』と思えるようになっただけで、少しずつ気持ちが軽くなっています。」
幼少期に親の怒りや不機嫌を受け、「自分が原因だ」と思わされる経験が繰り返されると、他人の感情に対しても同じように考える癖がついてしまいます。この結果、何でも「自分が悪い」と思い込む自己批判が強化され、大人になっても苦しむ原因となります。
ですが実際には、他人が不機嫌な理由の多くは、その人の性格や状況に由来します。
それを自分のせいだと思い込むと、不要なストレスを抱える原因になります。
そこで、「本当に私のせいなのか?」と考える習慣をつけることで、自分を責める必要のない場面を認識でき、心の余裕が生まれるのです。
3. 「いい人」をやめる許可を出す
次に挙げるのは、カウンセリングに寄せられた感想です。
「幼い頃から、アルコール依存症の父の機嫌を損ねないように気を遣って生きてきました。父はお酒を飲むと些細なことで怒鳴ったり、物を投げたりすることがありました。母はそんな父を刺激しないように常に顔色をうかがっていたし、私も『怒られないようにいい子でいなきゃ』と、自分の気持ちを押し殺して過ごしていました。
大人になった今も、その癖が抜けません。職場では『頼まれたら断ってはいけない』と思い、無理をしてでも期待に応えようと頑張ってしまいます。友人関係でも、相手が求めるリアクションをしないと嫌われるのではないかと不安になり、つい相手に合わせてしまいます。
でも、Pocheさんとのやりとりを通して、『私は本当はどうしたいんだろう?』と考えるようにしました。一人のときに、自分の気持ちを整理する時間を作るようになってから、少しずつ『これはやりたくないな』『本当はこうしたかったな』と自分の気持ちに気づけるようになってきました。まだ他人に合わせすぎてしまうことはありますが、『まずは自分の気持ちを大切にしていいんだ』と思えるようになったことが、少しずつ私の生きやすさにつながっている気がします。」
アルコール依存症の親を持つと、親の怒りを避けるために「いい子」でいる必要がありました。
この経験が「相手の期待に応えることが安全」という認識を作り上げます。
そのポジションから抜け出すためには、まずは一人の時に「自分は本当はどうしたいのか?」と尋ねたり、家に帰ってから「あの時本当はどうしたかったのか?」と問いかけること。そうすることで、少しずつ「自分の気持ち」を取り戻していけます。
4. 「自分軸」を取り戻す練習
次に挙げるのは、カウンセリング後に寄せられた感想です。
「仕事でもプライベートでも、『何がしたい?』と聞かれると答えに詰まってしまいます。食事を選ぶときも、人と遊ぶ予定を決めるときも、『相手が望んでいること』を基準に考えてしまい、自分の好みがわからなくなってしまいました。
カウンセリングを受けたときにPoche先生から、『まずは嫌いなものを考えてみるといいですよ』と言われました。確かに『これだけは嫌だな』と思うことはあるので、それを避けるようにすると、少しずつ自分の心地よい選択ができるようになりました。
まだ『これが好き!』と即答できるほどではないけれど、『嫌なものは避けていいんだ』と意識することで、以前より少しずつ楽になってきました。」
幼少期に親の意向や感情を優先する生活をしていると、「自分の気持ちは二の次だ」という認識が根付いてしまいます。
このため、大人になっても「自分がどうしたいか」を考えることが苦手になり、他人に振り回される原因となります。
自分の意見や感情を大切にすることは、心の安定と生きやすさにつながります。
「自分が好きか嫌いか」を基準に物事を選ぶことで、自分の気持ちに正直になり、少しずつ自分らしさを取り戻すことができます。
好きなものがよくわからない段階では、「嫌いなもの」を意識してみてください。
好きなものは「嫌いなもの以外」に隠れていますから、『好き』が見つからなくても焦らないで大丈夫ですよ。嫌いなものがあるなら、いずれ好きなものも見つかります。
5. 安全な人間関係を選ぶ
次に挙げるのは、実際の相談事例です。
「幼い頃、父がアルコール依存症で、家の中の空気がいつもピリピリしていました。父が機嫌を損ねると怒鳴ったり暴れたりするので、どうにかして怒らせないようにと必死でした。母もそんな父に振り回されていて、私の気持ちに寄り添う余裕はなかったように思います。
そんな環境で育ったせいか、大人になった今でも『相手に嫌われたらどうしよう』『見捨てられたらどうしよう』という不安が強く、人に合わせすぎてしまいます。友人や恋人との関係でも、自分の本音を言えず、相手の希望を優先するばかりで苦しくなることが多いです。
でも最近、メールカウンセリングを通して『すべての人と仲良くする必要はない』『安心できる人を選んでいい』と教えてもらい、少しずつですが距離を置くことを意識するようになりました。以前は『この人に嫌われたくない』という思いが強すぎて、苦しい関係を無理に続けていましたが、今は『自分が安心できる相手を大切にする』と考えられるようになり、気持ちが楽になりました。」
アルコール依存症の親との関係で「見捨てられる恐怖」を経験した人は、他人に拒絶されることへの過剰な不安を抱える傾向があります。
このため、全ての人に受け入れられようと努力しがちですが、それがかえって人間関係の苦しみを生む原因になります。
安全な環境を見つけることは、心を守る大切な一歩です。
信頼できる人間関係は、安心感と自己肯定感を高める基盤になります。無理に全ての人と仲良くしようとせず、自分にとって心地よい人間関係を選ぶことで、過剰なストレスを減らすことができます。
あなたが怖いと感じたり、落ち着かないと感じる人や場所があるなら、その場所から離れてみましょう。その場所を乗り越えようとするのではなく、避けてみましょう。
大人になったあなたは、自分で人間関係や場所を選んでいけるからです。
「あなたは悪くない」
アルコール依存症の親のもとで育つことは、決して簡単なことではありません。
その影響が長く続き、自分を責める癖や他人の感情を気にしすぎる習慣を作ってしまうこともあります。
でも、ここでお伝えしたいのは、「あなたは悪くない」ということです。
親の感情も、他人の感情も、あなたが責任を負うべきものではありません。
「自分のせいではないことがある」と気づくことが、最初の一歩です。
その気づきから、自分を責める心を少しずつ手放し、「自分軸」で生きる道を歩み始めてみませんか?
あなたはもっと自分らしく生きていいのです。
そのためのヒントを、この文章が少しでも提供できていたら幸いです。