【子どもが苦しむ親】愛情を「支配する道具」として使いこなす親
こんにちは。心理カウンセラーPocheです。
今日ご紹介する親のタイプは、愛情を「道具」として使いこなす親についてです。
このタイプは、以前ご紹介した『かまいすぎて子どもを窒息させる親』とは真逆のタイプです。
「かまいすぎて子どもを窒息させる親」が子どもに密着しすぎるのと反対に、このタイプの親は子どもと心の交流がほとんどありません。
大人になった時、「親離れ」「子離れ」が上手にできているように見えることもあります。
誰の目に見ても明らかな「身体的・精神的暴力」をふるうこともないので、「よくいる親」「ふつうの親」に見えるのも特徴です。
だから、友達や周囲の人に「ウチの親のこんなところが嫌」と打ち明けたところで、あなたの深刻さは伝わりません。
「ウチも同じだよ」「どこもそんなもんだよ」と軽くあしらわれたり、「大人になったのにまだそんなこと言ってるの?」「甘いよ」と逆に責められることもあります。
とにかく周りに理解されにくいのが、このタイプの親なのです。
愛情を「支配する道具」として使いこなす親とは
親は、無償の愛を子どもに与えます。
子どもが何か出来ても出来なくても、うまくいっても失敗しても、「あなたは価値ある人間だ」と伝えます。
でも、このタイプの親は、条件付きの愛を子どもに与えます。
子どもが何か出来たときには愛を与えますが、出来ない時には与えません。
自分の言うとおりにすればサポートしますが、言うことを聞かないと見放します。
自分に従えば「いいこ」で、従わなければ「悪い子」です。
このようにして、子どもが自分の期待通りに動くように、コントロールするのです。
怖いのは、親は「ほぼ無意識」でそれを行い、子どもはそれに気がつかず「親に認められたい」「親を喜ばせなければ」と頑張り続けてしまうことです。
このタイプの親には、5つの特長があります。
なお『カルトの教祖のような親』の記事では、どれか1つの特徴が強烈に当てはまるとお伝えしましたが、このタイプは複数の特徴が当てはまることもあります。
1.機嫌を損ねると「罰」を与える
親の機嫌を損ねると、子どもに「罰」を与えます。
罰というとものすごく怖いことをイメージされるかも知れませんが、「体罰」とは限りません。
明らかに不機嫌な態度をアピールし、いつものように遊んでくれなかったり、話を聞いてくれなくなったりして「子どもに無言の罰」を与えることもあります。
ですがこれは決して「これくらいのこと」「大したことない罰」ではありません。
大人になったあなたからすれば「これくらいのこと」と思うかもしれませんが、子どもにとっては「立派な罰」です。
親は、子どもにとって絶対的に強い存在です。親が不機嫌だったり怒ったりすることは、言葉では表現しきれないほどに怖くて嫌なものなのです。
子どもの頃は、どんなに居心地が悪くても「その家」に帰らなくてはいけません。親が怖くても、不機嫌だからイヤだと思っても、その家に居続けなくてはいけません。
だから、その家で生きてくために、自分の気持ちを麻痺させたり、「自分が悪い」と思い込もうとすることもあります。
このタイプの親は、そうすることで子どもが自分の言うことを聞くことを知っているのです。
子どもが言うことを聞くまで、不機嫌なアピールは続きます。子どもはほとんどの場合、従うしかありません。
そのせいで大人になった時、周囲の不機嫌に敏感になります。
自分のせいではないのに、誰かの機嫌を取ろうと頑張ったり、おとなしくしたり迷惑をかけないようにすることで、不機嫌な人に気を遣うこともあります。
「スルーすればいい」「気にしなければいい」と言われることもありますが、子どもの頃の経験から「それができない」のです。
だから、不機嫌な人がそばにいるだけで、ものすごく疲れてしまいます。
2.幸せは「めったにない」と思っている
このタイプの親は、不幸が当たり前だと思っていることが多いです。
「幸せはそこら中に転がっている」と子どもに伝える代わりに、「幸せはめったにないことだ」と伝えます。
「私はあなたがいて幸せだ」と子どもに伝える代わりに、「私はあなたのせいで苦労している」と伝えます。
「幸せ」という言葉よりも、愚痴や不満といった不幸な言葉が多いのがこのタイプの親です。
3.愛情は子どもをコントロールする道具
子どもが慰めてほしい時に、慰めません。
子どもが抱きしめてほしい時に、抱きしめません。
このタイプの親が愛情を与えるのは、子どもをコントロールしたい時です。
言うことを聞かせたり、自分の思い通りにしたいときに「愛情」を与えます。
子どもが望むときに愛情を与えるのではなく、「親の都合」で愛情を与えます。
もっと厄介なのは、「愛情を与えない」ことで言うことを聞かせるタイプの親です。
言うことを聞いても褒めないし、認めません。でも言うことを聞かないと、子どもを攻撃します。
このタイプの親に育てられると、子どもは親に強く依存するようになります。
この弊害の1つが、大人になった時の恋愛関係です。
見捨てられないために誰かに尽くしすぎてしまったり、嫌われないために我慢しすぎてしまうことがあります。
素直な自分の気持ちを言えず、相手を試すようなことをして後悔してしまうこともあります。
相手が「好き」といってくれても、その言葉が信じられず、常に不安を感じることもあります。
4.子どもを褒めない、スキンシップがほとんどない
このタイプの親は、基本的に子どもを褒めません。
さらに多くの場合は、体の触れ合いもほとんどありません。
抱きしめたり、手をつないだりということを苦手とする親が多いです。
理由は2つ考えられます。
1つめは「方法が分からない」タイプ。
自分自身が親と触れ合わずに育ってきたので、「子どもを褒める」「子どもとスキンシップをとる」ことの重要さが分かりません。
それが必要だということ、子どもがそれによって安心できることをしりません。
2つめは「自分のことで精一杯」タイプ。
親子逆転するような親など、感情面で成熟していない親は「子どものこと」を考えて行動することが出来ません。
子どもが「褒めてほしい」と思っている気持ちに気づき、与えることが出来ません。親が、大人になりきれていないのです。
子どもの気持ちを受け止めるはずの親が、「子どもに自分の気持ちを受け止めてほしい」と思っています。
ありのままの子どもを受け止めるはずの親が、「子どもにありのままの自分を認めさせよう」としています。
※親子逆転やそのほかの影響については、書籍『もしかしてうちの親って、毒親』の第1章で説明しています。
子どもの頃に満たされるはずのものが満たされていないので、大人になった時に「他人」に求めすぎてしまうことがあります。
誰かに認めてほしいという気持ちが強くなり、そのために尽くしすぎたり頑張りすぎたりします。
それでも認めてもらえていないと感じると、「どうして私ばかり」という悲しみや不満が怒りとなって表出することもあります。
5.大きくなった子どもを脅す
このタイプの親は、子どもの頃は「愛情を与えない」ことでコントロールします。
でも、大人になるとそれが通用しなくなることがあります。
すると、このタイプの親は、違う手段に出ます。
1つ目は、子どもを脅すこと。
最もポピュラーなのは、「言うことを聞かないと親子の縁を切る」「言うことを聞けないなら出て行け」というものです。
2つ目は、罪悪感に訴えかけること。
「これまで育ててあげたのに」「恩を仇で返すのか」「誰のおかげで生活できているのか」など、いうことを聞かない子どもが罪悪感を抱くような言葉を投げかけます。
このタイプの親に育てられたことがない人なら、「いうことを聞かなければいいだけ」と思うでしょう。
…でも、現実にはそう簡単にはいかないのです。
このタイプの親を持つ子どもは、「自分が言うことを聞いてさえいれば丸く収まる」ということを子どもの頃の経験から学んでいます。それまでは徹底的に子どもを無視して攻撃した親が、言うことを聞くと何事もなかったかのように「いつもの親」に戻るからです。
だから、自分が我慢してでも、親に従うことを選びます。
…いえ、正確には「従うしかない」と言った方が良いかもしれません。子どもに責任はありません。
このタイプの親に育てられると…
このような親に育てられると、大人になった時に次のような悩みを抱えやすくなります。
- 自己不信感が増す
- 自分に自信が持てない
- 抑うつ感がつのりやすい
- 物事に対する期待感や自信が持てない
- 「自分は愛情に欠けていて、人からも愛されない」と感じる
- 人と付き合う能力が劣っているように感じる
- 人との距離感の保ち方が分からない
子どもは無意識にコントロールされる
このような親に育てられると、子どもは戸惑います。
「子どもを愛するはず」の親から、愛情を与えられたり、ひっこめられたりするからです。
このような親が与える最大の弊害は、「愛は気まぐれで長続きしない」「愛は相手を喜ばせた時にだけ与えれるものだ」という概念を無意識のうちに子どもが抱くことです。
大人になった時に、恋人や配偶者との関係に悩むケースは少なくありません。
愛されているのに、不安なのです。
相手が喜んでいないと、見捨てられるようで怖いのです。
その結果、無意識に長続きしない恋を選んだり、本当は好きなのに自ら終わりを告げたり、幸せになれない相手を選んでしまうこともあります。
親の言い訳
このような親がよく使う言い訳に、次のようなものがあります。
- 「世の中の残酷で厳しい現実を子どもに教えるために、厳しくしているのだ」
- 「人生は、愛やら幸せやらで成り立つほど甘くない。それを教えられるのは親だけだ」
- 「子どものこと思って、心を鬼にして伝えている。子どものためだ」
親が何を感じて、信じるのかは自由です。
でも、それを子どもに押し付けるべきではありません。それは「子どものため」ではなく、「親のため」。自己満足です。
このような親に育てられた子どもの多くが、「親から愛されていると感じたことがない」と言います。
そう感じるのも当然のことです。
子ども時代に与えられるべき大切なものが、親の手で取り上げられてしまっていたのですから。
- 「愛されているのに不安になる」
- 「愛されると怖くなる」
- 「誰も愛してくれないのではないかと思う」
- 「自分に価値を感じられない」
- 「幸せになる、という言葉に抵抗を感じる」
- 「愛や幸せがよく分からない」
このような感情が出て苦しんでいるのなら、あなたも「このタイプの親」に育てられた可能性があります。
このような思い込みがつくられたきっかけは、「あなたの過去」にあるはずです。
その過去を整理することで、今よりも毎日が楽に生きられるようになります。
親の無意識のコントロールから抜け出し、自分らしい毎日を送ることができるようになります。
解決法や対処法については、書籍『もしかしてうちの親って、毒親』でご紹介していますが、何より重要なのは「自分のせいではないこと」に気づくことです。
親との関係において「自分が悪い」と思っていたことの中に、「自分のせいではないこと」があったと知ることは、あなたが自分らしくもっと自由に生きていくためのきっかけになるはずです。