「意見を言えない」の裏にある理由 ~その選択を認める考え方
こんにちは。
心理カウンセラーPocheです。
最近では、「自分の意見をしっかり持とう」「意見を言える人が素晴らしい」といった風潮が強まっています。
SNSや職場、学校などでも「意見を言うのが良いこと」とされ、意見を持たないことや言わないことが、まるでネガティブなもののように扱われることも少なくありません。
でも、カウンセラーとして相談をお伺いしていると、このような風潮の中で苦しさを感じている人がいるのも事実です。
「意見を言いたいけど言えない」「そもそも意見を言う必要があるのか」と悩みながら、周囲の期待と自分の気持ちの間で揺れている人も、実は多いのです。
この記事では、「意見を言えない」と感じる背景や、意見を言わない選択を認めることの大切さについてお話しします。
意見を言うことがすべてではないと気づき、自分らしく肩の力を抜いて生きられるヒントをお届けできますように。
本心を隠すと疲れるのはなぜ?
「自分の意見を言わない」ことがダメなのではありません。
詳しくは後述しますが、意見を言わないことのメリットもありますから、そのことにあなた自身が悩んでいなければ何の問題もないのです。
ですが…
「言いたいのに言えない」場合は、意見を言えないことにストレスが溜まります。
なぜ言えないのか
「本心を隠してやり過ごす」生き方には、これまでの経験や周囲との関係性が影響していることが多いです
たとえば、幼少期に親や周囲の大人から「空気を読むこと」を求められてきた場合、自分の気持ちを抑えて相手に合わせる癖がついていることがあります。
その場では穏やかに過ごせても、心の奥では「本当はこう言いたいのに」「なんで私ばかり」といった思いがたまりやすく、後々違和感や疲れとなって表れるのです。子どもの頃はそれが当たり前だったとしても、大人になって「疲れ」が出てくることもあります。
また、「意見を言うと否定されるのでは」「私の考えなんて価値がないのでは」といった恐れがあると、本心を隠してしまうことが習慣化しやすくなります。
子どもの頃のあなたにとっては、自分を守るための大切な手段だったはずなのです。
ですがこの恐れが、大人になった時「他の人」に対しても同じように働くと、人間関係を築くのが難しくなります。
例えば、「信じたいのに、信じられない」「好きと言われても、不安になる」といった悩みにつながることは珍しくありません。
「言えない」のではなく、「言わない」を選んでいる可能性
「意見を言えない」と感じていても、実は自分で「言わない」ことを選んでいる場合もあります。
これは必ずしもネガティブなことではなく、自分なりの理由や目的があって選択している場合も多いのです。
ここでは3つの理由について、相談事例を交えてご紹介します。
1:相手を傷つけたくないから
「この意見を言ったら相手が傷つくかもしれない」と感じる場面では、あえて自分の意見を控えることで、相手への配慮を優先している場合があります。
自分の意見を言うと相手を傷つけてしまいそうで怖い
「昔から、人と衝突するのが苦手です。友人や同僚と話しているとき、『こう思う』と言いたくても、『この意見を言ったら相手を傷つけるかもしれない』『否定されたらどうしよう』と考えてしまい、結局言えずに終わります。自分の意見を持たないわけではないのですが、誰かを不快にさせるくらいなら黙っていた方がいいと思ってしまいます。でも、そのせいで自分の気持ちが置き去りになっている気がして、モヤモヤすることもあります。」
相手にどう思われるかが気になり、意見を言えない
「会議や話し合いの場で、自分の意見を言うのが苦手です。本当は思うことがあっても、『この発言で場の空気が悪くなったらどうしよう』『みんなの考えと違ったら浮いてしまうかも』と考えすぎて、結局何も言えません。特に、相手が自信を持って話しているときは、『違う意見を言うことで否定されたと感じたらかわいそう』と思い、なおさら言えなくなります。何も考えていないわけではないのに、ただ黙っている自分に落ち込むことがあります。」
2:その場では必要性を感じていないから
意見を言うことがその場で特に意味をなさない、あるいは自分が介入しなくても問題が解決しそうな場合、「黙っておく」という選択をしていることもあります。
自分が言わなくても解決しそうだから黙ってしまう
「話し合いの場では、他の人たちが積極的に意見を出していると、『自分がわざわざ言う必要はないかな』と思ってしまいます。自分の中にも考えはあるけれど、誰かがすでに似たようなことを言っていたり、話の流れで自然とまとまりそうだったりすると、『わざわざ口にしなくてもいいか』と黙ってしまうんです。そのせいか、周りから『いつも意見がないよね』と言われることがあり、本当にそれでいいのか悩むことがあります。」
意見を言う必要があるのかわからない
「会議やグループの話し合いで、自分が意見を言う意味があるのか分からなくなることがあります。特に、自分が詳しくない話題だったり、自分が決定権を持っていない場面だと、『別に自分が何か言う必要はないな』と思ってしまうんです。周りの人がどんどん話を進めているのを見ると、『自分が何か言っても流れを止めるだけかも』と感じて、余計に黙ってしまいます。でも、いつも黙っているせいで、『消極的だ』と思われていないか不安になることもあります。」
自分のエネルギーを守るため
意見を言うには、エネルギーや時間が必要です。そのため、あえて言わずにやり過ごすことで、自分のリソースを守ろうとしている場合もあります。
疲れてしまうので、あえて意見を言わない
「仕事の会議や友人との話し合いで、意見を求められることがありますが、正直、考えて発言するのが疲れると感じることがあります。過去に自分の意見を伝えたときに反論されたり、説明を求められたりして消耗した経験があるせいか、『どうせ言っても議論になるなら、最初から黙っていた方が楽』と思うようになりました。特に、疲れているときや気力がないときは、余計なエネルギーを使いたくなくて、あえて何も言わないことを選んでしまいます。」
意見を言っても変わらないと感じてしまう
「何かを変えたいと思っても、何度も意見を出して受け入れられなかった経験があると、『言うだけ無駄かもしれない』と考えてしまいます。以前、職場で改善点を提案したことがありましたが、スルーされたり、『前例がないから』と却下されたりしました。それ以来、『どうせ言っても変わらないし、エネルギーを使うだけ損』と思うようになり、積極的に発言するのをやめてしまいました。心の中ではモヤモヤすることもありますが、余計な疲れを避けるために、黙っている方が楽に感じます。」
意見を言うべき?
「意見を言うことは良いこと」という風潮がある一方で、実際にはデメリットも存在します。
そのため、無意識のうちに「意見を言わないほうがいい」と感じる場面があるのは自然なことであり、「言えない」「言わない」としてもそれが悪い選択だとは限りません。
「言えない」ことに悩んでいたり「言えない自分」に落ち込んだ時には、次の「言うことのデメリット」について思い出してみてください。
そうすることで、言えない自分を必要以上に責めることはなくなり、「言えなくてもいい」「言わない方がいいこともある」と今の自分の状況を肯定できるようになるはずです。
意見を言う4つのデメリット
- 対立を生む可能性がある
意見を言うことで、自分と他人の考え方の違いが明確になり、衝突が起こることがあります。特に、相手との関係を良好に保ちたい場合には、意見を言うことがリスクに感じられるでしょう。 - 責任が生じる
意見を言うと、その発言が自分の責任となり、結果に対して説明を求められる場合があります。「自分の発言で失敗したらどうしよう」と感じることで、意見を控えたくなるのは自然な反応です。 - 誤解されることがある
言葉足らずで誤解を招いたり、自分の意図と違う形で受け取られたりすることで、人間関係がぎくしゃくする可能性があります。 - その場の空気が悪くなることを恐れる
場の雰囲気を大切にしたい場合、自分の意見が雰囲気を壊してしまうのではないかと感じ、言わない選択をすることもあります。これは「調和」を大切にする気持ちの表れでもあります。
あなたは、それでいい
「意見を言わない」ことが必ずしも悪いわけではありません。
それどころか、状況や自分のエネルギーを考慮した賢い選択であることも多いのです。過去を振り返ってみると、言わないことで、穏やかな関係や自分の心を守れた場面もたくさんあったはずです。
同様に、「言えない」自分を責める必要もありません。
意見を言うことが難しい場面では、自分が無意識に「今は言わない方がいい」と判断していたのかもしれないからです。そしてそれは、あなた自身が安全を守るために選んできた行動です。
だからこそ、「言えない自分」が悪いのではなく、「言わない」ことで守られてきたものがあるのだと考えてみてください。
一方で、あなたが「本当は言いたい」「自分の意見を伝えたい」と感じた時は、その思いに向き合い、小さな挑戦をしてみることが大切です。
その挑戦がうまくいかなくても、また次の機会に向かえばいいだけ。
大切なのは、世の中の風潮や周囲の期待に合わせて「言わなきゃ」と無理をするのではなく、あなた自身の気持ちやタイミングを尊重することです。
意見を言わないことで守られたものも大切にしながら、「言う」「言わない」を自分で選び取る自由を少しずつ取り戻していけたら、それはきっとあなたにとっての「自分軸」へとつながっていきます。
どんな選択をしても、自分の気持ちを大切に。
あなたはそのままで十分に価値のある存在です。どうか自分を優しく守りながら、自分のペースで進んでいってくださいね。