【2つの実例】子どもを認め愛するのではなく、「子どもに認め愛してもらおう」とする親たち

こんにちは。
心理カウンセラーPocheです。

 

これまで2度にわたり親子逆転についてお話してきましたが、今回の記事では親子の役割逆転の具体例についてお伝えします。

親子逆転には「これくらいどの家でもあるのかな?」と思えるようなものから、「まさかそんなことが…!?」と思えるようなものまでさまざまですが、今回は自分では気がつきにくい親子逆転の例を取り上げます。

 

毒親というほどではない。

親によくしてもらったこともある。

親と仲良く過ごせることもある。

でも、親は自分のことをわかってくれていない…親といるのがしんどい…

 

このような思いを抱えているのなら、あなたの生きづらさの原因は、もしかしたら親子逆転によるものかもしれません。

 

親子の役割逆転が起こると…

親子逆転とは、その名の通り親と子の役割が入れ替わることです。

掃除や家事など物理的な面はもちろんのこと、精神面での役割逆転が起こることもあります。

 

精神面での親子の役割逆転というのは、次のようなものです。

 

本来、親は子どもに愛を与えます。ありのままのあなたに価値があると、親が子どもに言葉や態度で示します。

でも、親子逆転する親は、子どもに愛してもらおうとします。「そのままのあなたではダメだ」と子どもを否定し、ありのままの親の姿を受け入れさせようとします。

 

本来、親は子どもを認めます。「よくできたね」「がんばったね」と子どもを褒めます。

でも、親子逆転する親は、子どもに自分を認めてもらおうとします。「お母さんいつも頑張っているね」「お父さんすごいね」と子どもに褒めてもらおうとします。

 

親子逆転をする親の多くは、精神的に親になりきれていません。

だから、子どもが成長するに従って、精神的に親を追い越すこともあります。

自分の親が満たしてくれなかった基本的欲求(母親に愛されたいと思う気持ち)を、子どもに満たしてもらおうとする……それが親子逆転をする親なのです。

※今回は割愛しますが、親子逆転をする親もまた、親の愛に飢えています。それを子どもを使って埋めようとしてしまいます。だからこそ子どもを手放さない(手放せない)ケースが多く、問題が複雑化しやすい傾向があります。

 

親子逆転の実例2つ

 

親子逆転の実例を2つ、お伝えします。

事例1:みんなのお母さんになる

A子さんは、2人姉妹の長女でした。

お母さんが料理を作れば「わぁ、おいしそう♪」と喜び、お父さんが仕事で成果を収めたと聞けば「わぁ、さすがだね!」と褒め、妹が親に怒られ落ち込んでいれば「あなたは頑張ったよ!大丈夫」と慰める。

夫婦喧嘩があると「お父さんがこんなことを言ったのよ」と、お母さんがA子さんに愚痴を話す。A子さんは「悲しかったね」と受け止めてあげる。お父さんから相談を受けることもありました。まさにA子さんは、家の中の「小さなお母さん」でした。

だからこそA子さんは、自分が甘えることができませんでした。
しっかりしなきゃ、話を聞かなきゃ、私が支えなきゃと、いつも頑張っていました。

たまに「お母さん、見て!習字で賞を取ったよ」と喜んで話しても、「ふーん」とか「それくらいで喜ばないの!」とたしなめられてしまう始末。

大人になるにつれ、「私はみんなのためにこんなに頑張っているのに…」という気持ちと、「私は何のために生きているのだろう」という気持ちで揺れ動くようになりました。

 

子どもの自慢を聞いて「すごいね!」と伝えてあげるのが、親です。

子どもが悲しんでいる時に「悲しかったね」と寄り添ってあげるのが、親です。

でも、親子逆転が起こると、そうはいきません。

 

子どもが親の自慢を聞いて、「すごいね!」と言わなくてはいけません。

だから子どもは、自分のことを伝える機会を失います。

 

親が悲しんでいる時に、「どうしたの?大丈夫?」と寄り添わなくてはいけません。

子どもが悲しんでいると、「それくらいで!私なんてもっと苦労したわよ!」とマウントをとる親もいます。

だから子どもは、「自分なんて」と思うようになります。それが大人になった時に、「自分のことより他人を優先する」「自分を大切にできない」へと繋がり、人間関係を複雑にします。

 

 

事例2:子どもの気持ちより「自分の気持ち」

B子さんの母親は、子どもの頃から寂しい思いをしていたそうです。

「お母さんは、自分の母親に嫌われていた。お母さんの味方は誰一人としていなかった」「お金もなくて旅行にも連れて行ってもらえなかった。だから、夏休み後の学校で、みんなの旅行の話を聞くのが嫌だった」という話をいつも聞かされていました。

そのこともあってかB子さんの親は、毎年B子さんを旅行に連れて行ってくれました。

でも少しでも楽しくなさそうにしたり、喜ばなかったりすると、「何だその態度は!」「せっかく連れてきてやったのに!」とものすごく怒るのです。

だからB子さんは旅行中、つねに母親に気を遣っていました。疲れていても笑顔、楽しくなくても笑顔、母親の話も嫌な顔一つせず聞いてあげました。

母親の機嫌を損ねると大変になると、知っていたからです。(機嫌を取るのもB子さんの役割でした)

大人になったB子さんは、ある日、勇気を出して旅行の誘いを断りました。すると母親は、「あなたのために連れて行ってあげるのに!あなたは恩知らずだ!感謝が足りない」と言って怒り出しました。

 

母親との旅行にストレスを感じていたB子さんは、勇気を出して誘いを断ったところ、「恩知らず」「感謝が足りない」と言われてしまいます。

B子さんは、「私のためにしてくれている旅行なのに、どうしても行きたいと思えない」と罪悪感を感じて相談に訪れたのです。

 

母親は「あなたのために連れて行ってあげているのに」と言っていますが、実際のところは違います。

本当に子どものためなのだとしたら、子どもが楽しくなさそうでも怒りません。

子どものためなら、「行きたい」「行きたくない」という子どもの気持ちを尊重するはずです。

 

でも、B子さんの母親はそうではありませんでした。

B子さんの母親は、実は「自分のため」に旅行に連れて行っていたからです。

小さい頃に家族旅行に行きたかったけれど、行けなかった……その時の悔しさや寂しさを埋めるための自分が「欲しかった愛情」を満たすための旅行だったのです。

 

B子さんのお母さんは、B子さんに本当は母親からもらうはずだった愛情を求めています。

だから、子どもが喜ばないと怒ります。

子どものための旅行ではなく、自分(親)のための旅行だから、子どもは楽しめません。

 

親の怒りのメッセージは、「私を愛して」「私を喜ばせて」です。

親子逆転が日常的になると、親が子どもを喜ばせるのではなく、「子どもが親を喜ばせるのが当たり前」になっていきいます。だから子どもは、苦しみます。

 

親を喜ばせるのがダメだ、と言いたいのではありません。

ですが「親を喜ばせること」が子どもの義務になってしまうと、子どもは自分の人生を自由に生きることができなくなってしまいます。

 

この弊害は、大人になった時にも残ります。

親にしてきたことを「他人」にもするようになるからです。

 

大人になった時、どのような弊害が残るかは「子どもの頃に親に何を求められたか」次第です。

 

例えば…

誰かを喜ばせなければいけない、楽しませなければいけないと、プレッシャーを感じてしまうことがあります。

誰かを怒らせてはいけない、気分を害してはいけないと、自分の存在感を消すこともあります。

自分よりも他人を優先するようになります。子どもの頃から「親を優先しなければいけなかった」からです。

 

 

親子逆転で育ち『大人』になったあなたへ

ひどい親子逆転状態で育つと、子どもは「私は誰からも愛されない人間だ」というイメージを抱くようになります。

このイメージを持ったまま大人になると、他人からの拒絶や無視に非常に敏感になります。

 

  • 大切にしてくれているのに、大切にされているという自信が持てない。裏があると思う。
  • 無視されていないのに、無視されたと思う。
  • 何か注意されると、「私のすべてがダメなんだ!」と思い込んでしまう。

 

このような「過去に作られた思い込み」が、非常に根深く残ります。

大きくなるまで何十年と親子逆転で過ごした人の傷は、一般的な心の傷とは深さも程度も全く違うのです。

「こんなことでまだ悩んでいるなんて…」と、自分を責めないでくださいね。

まだ悩むほど、色々試しても心の傷がいえないほど、あなたの傷が深く広かったということです。

 

何かあれば相談してみて下さい。

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