【これって親不孝?】親に罪悪感を抱くあなたへ 〜そうではないと断言できる理由
こんにちは。心理カウンセラーPocheです。
今回の内容は、「親不孝」と「恩返し」というテーマについて。次のような気持ちを抱えている「あなた」に向けた内容です。
- 「親不孝」と言われてショックを受けた
- 親は嫌いじゃないけど、なんだか苦手
- 育ててもらったぶん恩返ししなきゃ
- 会いに行かないのは親不孝かな…
あなたがすでに成人していても、何歳になっていたとしても、親は「親」として力を示し続け、子どもの立場のあなたを縛り続けます。
この記事は、「恩返ししなきゃ」「親不孝なのでは」と親との関係に悩む、子どもの立場のあなたに向けたメッセージです。
あなたは本当に親不孝?
「自分は親不孝だ」と思ってしまうと、「自分は親を大切に出来ていない悪い子だ」と心のどこかで自分を責めてしまいがちです。親に自分の意見を言えなくなったり、嫌でも断れなくなったり、勇気を出して意見を言ったとしても罪悪感に苦しめられてしまうこともあるでしょう。
それは、「親不孝」という言葉が、子どもを責める意味を持つ言葉だからです。
事実、親不孝の意味について調べると、『親を大切にしないで心配や迷惑をかけること』と辞書に記されています。
「親不孝なのでは…」と感じる人には、大きく分けて2つのタイプがあります。
1つめは、
親から直接言われた人。
2つめは、
自分でそう思ってしまう人。
あなたはどのタイプに近いでしょうか?
ここでは、それぞれのタイプに見られる傾向について解説していきます。
1.親から直接言われた
親から直接、「あなたは親不孝だ」と言われることがあります。
親を傷つけてしまった時に言われることもあれば、自分の意見を主張したり、親の意見に沿わないだけで「親不孝」と言われることもあります。
親の言葉は、子どもの心に深く残ります。
「親不孝」というレッテルを貼られてしまうと、何かあるごとに「親不孝」が頭をよぎるようになってしまうのです。
親に心配をかけるのは親不孝、親のお願いを聞かないのも親不孝、親の連絡に出ないのも親不孝、親の言うことを聞かないのは親不孝…と、何かにつけて「親不孝」というワードがあなたを苦しめるようになります。SNSやメディアなどでその話題が取り上げられると、つい目が入ったり、意識してしまったりします。
その結果、自分のやりたいことではなく「親が許してくれそうなこと」を選ぶようになります。
自分のやりたいことをやって親を悲しませたり怒らせたりしたら、それこそ「親不孝」という言葉に苦しめられてしまうからです。
それとは反対に「親が許さないこと」をわざと選ぶこともありますが、この場合にも、最終的には「そんなことをした自分」を責めて苦しんでしまいやすいのです。
ここで1つ、親があなたに貼った「親不孝」というレッテルが、どれほど強力なものなのかを示す実験をお伝えします。
アメリカのある心理学者が、シカゴの小学校5年生に教室内を整理整頓し、ゴミを散らかさないように説得するための実験を行いました。
クラスAでは、ゴミを散らかすことがいかに悪いことかを説明し、教室を綺麗にすることの大切さを教えました。掃除を担当していた用務員も、「綺麗にしてほしい」とお願いしました。
一方クラスBでは、「このクラスの生徒が学校で一番整理整頓ができている」と褒め、「きれい好きな生徒たちだ」と先生が話しました。掃除を担当していた用務員にも、「このクラスが学校で一番きれいだ」と話してもらいました。
その結果、クラスAでは改善が見られなかったのに、クラスBでは生徒たちがゴミを散らかす割合が激減したのです。
この実験結果からわかるのは「綺麗好きだ」「このクラスは綺麗だ」とポジティブなレッテルを貼られた生徒が、無意識にレッテル通りに振舞うようになるということです。全ての人がそのように行動するとは限りませんが、人の傾向として自分に貼られたレッテルは無意識下でジワジワ働きます。
親の言葉は、さらに強い影響を及ぼします。
だから、「あなたは親不孝」というネガティブなレッテルを親に貼られてしまうと、子どもは「親不孝」というレッテルに一生苦しめられてしまうのです。
ここでお伝えしたいのは「あなたが親不孝だから、親不孝だ」と思ってしまうのではなく、「親不孝だというレッテルを貼られたからそう思ってしまう」という1つの可能性についてです。
「親不孝だ」と思ってしまう人は、過去に親に「親不孝だ」と言われていないか振り返ってみてくださいね。
2.なぜか親不孝だと思ってしまう
- ○○さんの娘さん、親が乗り気じゃないのに老人ホームに入れようとするんですって。
- 大学に行かせてもらったのに、孫の顔も見せないなんて親不孝よねぇ。
- ○○さんの息子さん、休職中らしいわよ。大学まで頑張っていかせたのに、なんだかねぇ。
このように親が「誰か」や「何か」に対して話す愚痴や文句から、「自分も親不孝なのでは」「こういうことをしたら親不孝だと言われてしまう」と察してしまうことがあります。
そのほか、親が他人をほめる言動から「自分は親不孝なのでは」と察することもあります。
親が無意識にやっていることもあれば、意図的にやっていることもありますが、いずれにせよ子どもに及ぼす影響はネガティブなものに変わりありません。例えば、次のようなケースです。
- ○○さんの息子は、毎年ご両親を旅行に連れて行っているんですって。いい息子さんだわ~
- ○○さん、お孫さんが出来たんだって。羨ましいわぁ。
- ○○さんのお子さんは、毎日電話をくれるんですって。
このように親から直接「親不孝だ」と言われていなくても、親の態度や言葉から察してしまうこともあります。
親と子は絶対的な力関係の差がありますから、直接言われなくても、直接言われたのと同じくらいの効果があるのです。
親不孝なんかじゃない
辞書通りに「親を大切にしないで心配や迷惑をかけること」が親不孝なのだとしたら、そもそも「親不孝」だなん言葉を親が使うべきではないというのが私の素直な気持ちです。
親が子どもに「あなたは親不孝だ」と伝えるのは、「私(親)を大切にして!」と子どもに強制しているようなものです。子どもにとっては「親に心配をかけてはいけない、親に迷惑をかけてはいけない」というプレッシャーにもなります。
親には、悪気はないかもしれません。
子どもがこれほどまで苦しんでいることも、知らないかもしれません。
ですが、親にも事情があると理解して「親を責めない事」と、自分が苦しんでいる「気持ちを認めること」は全く別物です。
親の事情を理解するなら、あなたの事情も理解してあげてください。
「あなたが親不孝なのでは…」と苦しんでいるのもまた、1つの事実だからです。
重要なのは「どのような意図で親が言ったのか」ではなく、それによってあなたがどう感じたのかです。
相手に悪気がなくても、あなたの心が傷つくことがあります。
そしてそれは、「傷ついたあなたが悪い」のではありません。
親を苦しめているのでは、親を悲しませているのではと思い悩んでいるかもしれませんが、あなた自身はどうでしょうか?
あなた自身も、「親不孝なのでは」と苦しんでいるのではないでしょうか。親以上に今苦しんで悩んでいるのは、あなたではないですか?
だからこそ、大切なことをお伝えします。
「親不孝なのではないか」と思い悩んでいる時点で、あなたは親不孝ではないです。
親に貼られた「親不孝だ」というレッテルが剥がせず、「自分が親不孝だ」という思いが消えないのであれば、「親不孝で構わない」と思ってみてください。
究極のところ重要なのは、あなたが親不孝かどうかということではありません。
あなたが「そのことで自分自身を責めてしまわないかどうか」なのです。
自分を責める行為は、あなたを苦しめます。親への罪悪感から、親への怒りや悲しみ全てが、矛先を変えて「あなた」に向くこともあります。自分のせいではないことで、自分を責めたり追い込んだりしてしまいます。
親不孝じゃないと思えるのなら、それでいいです。
そう思うことで「親不孝なのでは」と自分を責めて苦しまずに済むからです。
でも、「親不孝じゃない」と自信を持って思えなければ、それはそれでいいのです。
そう思えない自分を責めたり、「親不孝だと思ってしまう」自分の気持ちを否定するよりは、「今は親不孝だと思ってしまう」と受け止めておきましょう。
「親不孝だと思わされてしまうような過去がある」「親不孝ではないらしいが、今はまだ親不孝だと思ってしまう」と捉えてみてください。
恩返ししなきゃいけない?
- 親と離れたい
- 会いに行くのが嫌
- 高齢で心配だけど、自分の時間も大切にしたい
- 親は好きだけど、毎回会うのはちょっと…
- 連絡頻度を減らしたい
様々な理由から「親と少し距離をおきたいなぁ」「距離感を変えたいなぁ」と悩む方が増えています。
就職した、ひとり暮らしした、結婚した・・・このように、親と離れてやっと本音が出るようになることも多いです。
急にそのように感じるようになった人ほど「自分は性格が悪くなったのでは…」「冷たい人間なのでは…」と落ち込むことがあるのですが、違います。大丈夫。
そう思うことに罪悪感を持つ必要はありません。
子どもの頃から抑えてきた自分の気持ちが、「やっと出せるようになった」と思って良いです。
これは悪いことどころか、あなたにとって「良い変化」です。
行動や選択に迷った時には、「どうするのが自分にとってラクだろう」と考えてみてください。
現実にはそんな簡単な問題じゃないとしても、いったん「どちらがラクか」を考えることは、自分の本音を知るために有効な手段です。
家庭環境の影響で「ラクな方」が選べない人もいます。
その場合には「どちらが苦しそうか」と考えてみてください。苦しい方を見つけた後に「そっちじゃない方」を選ぶことで、「結果的に自分にとってラクな方法」を見つけることができますから。
どんな生き方が「正解」「不正解」ということはありません。
あなたが今より苦しまず、ラクに生きられる方法が「あなたの人生の正解」ですから。
これまでずっと親のためにがんばってきたあなたが、「これからは自分のため」にがんばれますように。
そのために「自分のせいではないことで自分を責める」ことが減るよう、この記事を通して心から願っています。