「もう過去のことなのに…」忘れなくてもいい。過去を受け止めることで、少しずつ前に進める
こんにちは。心理カウンセラーのPocheです。
「もう忘れたいのに、ふと思い出してしまう…」
「時間が経ったのに、まだ引きずっている自分が嫌になる…」
そんなふうに、過去の出来事に苦しんでいませんか?
「早く忘れなきゃ」「いつまでも引きずるのはダメなことだ」と思うほど、心は余計にその記憶にとらわれてしまうものです。
でも、無理に蓋をしなくても大丈夫。
忘れられないのは、それだけあなたが真剣に向き合ってきた証拠だからです。
「忘れなきゃ」と思うほど、心は縛られる
・嫌な記憶を思い出しては、「もう終わったことなのに…」と落ち込む
・ふとした瞬間に過去の感情がよみがえり、「また振り回されてる」と自分を責める
・「こんなに時間が経っているのに、まだ気にしてるなんて」と情けなくなる
こんなふうに、過去を思い出して苦しくなると、「早く忘れなきゃ」と焦ってしまうことがあります。
でも実は、「忘れよう」とするほど、心はその記憶にとらわれてしまいます。
人の心は、「考えないようにしよう」と思うと、逆に意識してしまうものだからです。
これは「皮肉過程理論(Ironic Process Theory)」と呼ばれる心理学の現象です。
この理論によると、人は「考えないようにしよう」と意識すればするほど、脳はそのことを監視し続けてしまい、かえって意識にのぼりやすくなると言われています。
例えば、「白いクマのことを考えないでください」と言われると、かえって白いクマのイメージが頭に浮かんでしまう…という実験が有名です。
過去の嫌な記憶も同じで、「忘れよう」とすると、脳は「ちゃんと忘れられているか?」をチェックし続けるため、かえって意識してしまいます。
無理に「忘れよう」とせず、思い出す事実をそのまま受け入れる方が良いのです。
「まだ心に残っているんだな」と、その存在を認めることが、過去から自由になるための第一歩になります。
実際の相談事例
Sさん(30代・女性)は、学生時代のある出来事をずっと引きずっていました。
「昔、信頼していた友人に裏切られたことがありました。そのときのことは、もう忘れたつもりだったんです。でも、大人になった今でも、ふとした瞬間に思い出してしまうことがあって…。
目の前の人はもちろん別人だし、楽しいはずの時間なのに、『あのときも、こんな感じで安心していたら裏切られたんだよな…』と、過去の記憶がよみがえってしまうんです。」
Sさんは、「もう過去のことなのに、こんなに引きずっている自分が嫌になる」「忘れられない私は、未熟なんでしょうか?」と悩んで相談に訪れました。
カウンセリングを通して、「忘れられないのは、それだけ傷ついた経験だったから。Sさんが未熟なのではなく、それだけ真剣に人と向き合ってきた証拠なんですよ。」とお伝えすると、Sさんは「無理に忘れなくてもいいんですね…」とホッとした表情を見せました。
その後、Sさんは少しずつ「忘れなきゃ」ではなく、「あのときの自分も、一生懸命だった」と受け入れる気持ちを持てるようになりました。
後日届いたメールには、次のように記されていました。
「まだ完全に割り切れたわけじゃないけど、『忘れなくてもいい』と思えただけで、少し楽になった気がします。
思い出しても、『あの時は本当に辛かったよね』と、自分に優しく声をかけられるようになりました。Pocheさんに話してよかったです。」
「まだ心に残っているんだな」と思えたら、それだけで一歩前進
忘れられない過去があるのは、それだけあなたが大切なものを持っていたということ。
真剣に向き合った経験だからこそ、簡単には手放せないのは当たり前のこと。
だからこそ、「忘れなきゃ」と焦る必要はありません。
「ああ、まだ私の心に残っているんだな」と気づけたら、それだけで一歩前に進めているんです。
もし今、過去の記憶に苦しんでいるなら、少しずつでも「忘れること」ではなく、「自分を受け止めること」を意識してみてくださいね。
あなたの心が、少しでも軽くなりますように。