【子どもが苦しむ親】かまいすぎて子どもを窒息させる親 ~実は「ものすごく辛い」過干渉・過保護の弊害
こんにちは。心理カウンセラーPocheです。
今日は、過干渉・過保護の親をもつ子どもの悩みについて。
このタイプの親は、他人から見た時に「子ども想い」「子どものために頑張っている」ように見えるのが特長です。
子どものためにアレコレ手を貸してくれたり、尽くしてくれたり、「一般的な良い親」に見えるケースも少なくありません。
「良い親」に見えるからこそ周囲に苦しみが理解されなかったり、「してくれたこと」「感謝していること」があるからこそ、誰にも相談できずに一人で抱え込んでしまうことがあります。
- 良くしてもらったのに、親を嫌いだと思うなんて…
- ここまで育ててもらったのに、親と距離をおきたいと思うなんて…
- 助けてくれたことがあるのに、親に不満をもつなんて…
- 親のことが嫌いなわけじゃないけど、一緒にいるのがしんどい…
ここ10年ほどの間に、このような相談が増えています。
明らかに悪い親ではないからこそ、毒親というほどではないと感じているからこそ、子どもが自分を責めてしまうことがあるのです。
かまいすぎて子どもを窒息させる親 〜5つの特徴
「かまいすぎて子どもを窒息させる親」というのは、過保護や過干渉の親を指します。
このタイプの親は「子どものため」「あなたのため」という名目で、子どもが求めていないものを与え続けます。
「良かれと思って」やりすぎたり、手や口を出したり、子どもを傷つけることもあります。
ですが、いくら親が「子どものため」と思っていたとしても、子どもの側がストレスを感じるようであれば、それは子どものためではありません。
「良かれと思って」したことだとしても、結果的に子どもの心を傷つけることがあります。子どもの人生を壊してしまうこともあります。
子どもが求めていないものを与え続けるのは、「自分(親)のため」なのです。
本当に子どものためを思っていれば、子どもの気持ちを大切にします。子どもの気持ちを聞きます。子どもが望んでいるものを与えようとします。
でも、このタイプの親は、そうではありません。
自分が与えたいと思うもの、自分が必要だと思うものを「子どもに与える」のです。
子どもが望んでいるかどうかは、関係ありません。
だから子どもは、苦しみます。
親から与えてもらっているのに、なぜか満たされません。
与えてもらっているのに、感謝できないこともあります。そんな自分を責めてしまうこともあります。
実際には、自分が必要としているものが与えられていないから満足できなかったり、感謝できないだけなのですが、「そう思うこと」さえこのタイプの親は封じてしまいます。
このタイプの親の特徴的な行動は、次の5つです。
※5つ全てが当てはまるわけではなく、どれか1つ、もしくは複数が当てはまることもあります。
1.詮索する
勝手に引き出しを開けたり、日記を読んだり、郵便物を開けたり…。
成人した後にも、あれこれと干渉したり、プライベートなことに首を突っ込んだり…。
子どもが耐えがたいほど、あれこれ詮索するのがこのタイプの親の特長です。
厄介なのは「私にはその権利がある」と、思っていること。
子どもが怒って「嫌だ」「やめて」と伝えても、意に介しません。親にはその権利がある、と思っているからです。
まるで拒否した子どもが悪いかのように、責任転換されてしまうこともあります。
2.拒否されることが苦手
このタイプの親は、他人から拒否されることを極端に恐れています。
だから自分の意見が通らなかったり、自分の言うとおりにならない時に不機嫌になります。
不機嫌の形は、「怒り」であることもあれば、「悲しみ」であることもあります。
親がどちらを使うのかは、子どもが「どちらの方が言うことを聞いてくれるのか」次第です。
怒った時にいうことを聞いてくれたと思えば、親は「怒り」を使います。恐怖で子どもを縛ります。
罪悪感を抱かせた時にいうことを聞いてくれたと思えば、親は「悲しみ」「不安」を使います。子どもの優しさを利用します。
この弊害は、大人になっても続きます。
怒りで親に支配された子は、他人の怒りにも敏感になります。怒らせないため、怒られないために行動するようになります。
罪悪感で親に支配された子は、他人の気持ちにも敏感になります。罪悪感から断れなかったり、我慢したり、自分を押さえ込んでしまいます。
このように「自分の性格のせいだ」と思っていたことが実は、過去の親子関係に起因しているケースは非常に多いのです。
3.望みを区別できない
自分の望みと、子どもの望みを区別できません。
自分がしたいことは、「子どももしたいはず」「子どもに必要なはず」と本気で思い込んでいます。
だから、子どもが「しなくていい」と言っても、勝手にやってしまいます。それが良いことだと思っているからです。
勝手にやったことを申し訳なく思うどころか、「やってあげたのに何で感謝しないの?」と言うのがこのタイプの親です。
「しなくていいこと」をされているので、感謝できなくて当然なのですが、子どもは「自分が悪い」と思い込まされてしまいます。
この弊害は、大人になった時にも残ります。
自分が悪くない時でさえ「自分のせいだ」と思ってしまったり、自分がしたくないことを「誰かのために」してしまったり、自分の気持ちより他人の気持ちを優先してしまうこともあります。
子どもの頃に、そうしなければ怒られたり、悲しませたりしてしまったからです。
自分の望みや欲求を叶えることが「よくないことだ」と植え付けられてしまっています。本当は必要なことなのに、「よくないことだ」と思わせる過去がブレーキをかけてしまうのです。
そのせいで、人間関係で疲弊してしまいます。
自分ばかりが損をしているかのように感じることもあります。
4.違いを認められない
このタイプの親は、子どもの全てを批判するとは限りません。
ある時には受け入れてくれたり、認めてくれたり、褒めてくれることもあります。
ですが、子どもが、自分と違う意見を持つことを認められません。
子どもが「こう思う」と気持ちを伝えた時、自分と同じ意見であれば賛成します。
褒めてくれることもあるでしょう。
でも、自分と違う意見の時には、聞き入れようとしません。理解しようともしません。
「お母さんはそう思わない」と反対したり、「だからアンタは甘いのよ」「お母さんの言うとおりにしておけば間違いない」と自分の意見を押し付けます。
同様に、子どもが「これが好き」と気持ちを伝えた時には、自分と同じ意見であれば認めます。喜ぶこともあるでしょう。
でも、自分と違う意見の時には、否定します。自分の価値観を押し付けます。
そのせいで子どもは、自分の感覚に自信が持てなくなります。
大人になった時、「他人がどう思うか」が気になりすぎてしまいます。
自分に自信が持てなくなったせいで、「他人がどう思うか」を優先してしまうようになります。
子どもの頃、自分の意見を言ったら「よくない展開」になったからです。
嫌な経験の積み重ねが、人間関係での遠慮を生み出します。そのせいで、自分ばかり我慢させられてしまいます。
5.大事なことを勝手に決める
進路、就職、友達関係、恋人、結婚、子どものこと…
子どもが自分で決めたいと思うような、重大なことを勝手に決めようとします。
子どもに決定権があることでさえ、子どもの気持ちではなく、自分の気持ちだけで決めてしまいます。
厄介なのは「あなたのためを思って」という体裁のもと、自分の思い通りに物事を進めてしまうことです。
優しい子どもは、「あなたのため」と言われると拒否できません。嫌だけど従うしかないというジレンマに陥ります。
勇気を出して自分の意見を言ったとしても、親が聞き入れてくれないことを身をもって知っているからです。
この弊害が、大人になった時に「自分で決められない」「挑戦するのが怖い」につながります。
ですが、能力不足で「できない」のではありません。
子どもの頃に「自分で決定するチャンス」を親が横取りしてしまったせいで、「自分で決める経験」「挑戦する経験」が不足しているだけです。
実は、できないのではなく「慣れていないだけ」なのですが、このタイプの親を持つ子どもは「できない」と思い込まされてしまいます。
そのせいで自分に自信が持てなかったり、親と離れることに不安を抱くこともあります。離れたいのに、離れてはいけないような気がすることもあります。
このタイプの親に育てられると…
このような親に育てられると、大人になった時に次のような悩みを抱えやすくなります。
- 他人との間に、健全な境界線を引くことが出来なくなる
- 異性と、愛情のこもった親密な関係を築きにくくなる
- 強い依存心を持つ
- 容姿に自信がない
- 率先して何かを行う積極性が持てない
※このタイプの親は「過干渉」だけではなく、「子どもに甘える親」「完璧で重い親」「かわいそうな親」など複数のタイプを併せ持つこともあります。そのほかのタイプについては『もしかしてうちの親って、毒親』で詳しく解説しています。
それは「愛情」ではなく「依存」
このタイプの親は、一見すると「子ども想いの優しい親」に見えます。子育てに一生懸命な親に見えることも珍しくありません。
でも、このタイプの親が思う子どもへの愛情は、「理想的な親」が与える本来の愛情とは異なります。
理想的な親は、子どもの気持ちに寄り添い、共感し、認めようとします。
年齢に合わせて、子どもを支えようとします。子どもが大きくなってきたら、子どもを信じ、子どもの決断を見守ります。
でも、このタイプの親は、そうではありません。
子どもに依存しているからです。
理想的な親は「子どもを認めよう」としますが、このタイプの親は「子どもに認めてもらおう」とします。
さらには、このタイプの親は、子どもが大人になっても、世話を焼きたがります。
愛情ではなく「依存」なので、常に子供の世話を焼いていないと落ち着かないのです。子どもの年齢や成長に関係なく、「自分がしたいかどうか」だけで動きます。子どもの気持ちや事情よりも、自分(親)の気持ちを優先しているからです。
本来、親は子どものために存在します。
でも、このタイプの親の場合は、親のために子どもが存在していると思っています。
だから、子どもの自立を喜べません。子どもは自分の一部だから、手放したくないのです。
「自分で決められない」と悩む人たち
このタイプの親に育てられた子どもの特長で最も顕著なのは、自分で何かを決めるのに自信を持てないことです。
例えば、自分の意見をはっきり言うのが苦手だったり、周りからの評価を受け取れないこともあります。
「どうせ自分なんて…」と、自分自身に低い評価を下してしまうこともあります。自己肯定感が極端に低いのです。
「変わりたい」と思っているのに、なぜか変われないと悩む人も多いです。
変われない自分が嫌になったり、自分が甘えているのではないか、やる気がないのではないかと、自分自身を責めてしまう人もいます。そのたびに、過去に親に言われた言葉を思い出して、落ち込んだり怒りが出たりすることもあります。
でも、違います。
やる気や気持ちの問題ではありません。
ブレーキをかけているのは過去の記憶です。脳なのです。
これまでの親子関係において、「自分の好きにやったらダメだ」「自分の思い通りにやってもうまくいかない」と思い込まされている何かがあると、変化することにブレーキがかかります。
変化すること、成長すること、自立すること…それらを親が嫌がっていると感じていると、「それら」がよくないことだと判断してしまうこともあります。
「それら」をしてしまったら、親を怒らせたり悲しませたり、親の愛情を失ってしまうこともあるからです。
このようなタイプの親に育てられた場合、子どもの頃に「どのような思い込みがつくられたのか」を知ること。そしてその思い込みが、今のあなたにどのような影響を与えていて、どのような悩みを生み出しているのかを知ることが必要です。
※このタイプの親が与える影響については、『もしかしてうちの親って、毒親』より、「毒親育ちの5つの特徴」をご参照ください。
あなたには決断する力がないわけではなく、「ない」と思い込まされているだけだということ。
さらには、決断できないのではなく、親によって決断する機会を奪われてきたということ。それによって、決断する回数が減り、結果として決断することに「まだ」慣れていないだけなのだということも知っておいてください。
何かを決めること、意見を言うこと、自分らしく生きること、断ること、好きなことを楽しむこと……
これらに「まだ」慣れていなかったり、親に「できない」と言われてきただけで、今のあなたにはできることがたくさんあるはずです。
この記事が、「もしかして、私もできるのかもしれない」と知る、一つのきっかけになれば幸いです。