親に認めて欲しいという気持ちが大人になっても消えない弊害
こんにちは。心理カウンセラーPocheです。
今日お伝えするのは、親子の役割逆転について。
親子の役割逆転は、虐待やひどい暴言など「明らかにひどい親」に見えないケースも多いです。
だからこそ、問題が表面化しにくく、知らず知らずのうちに生きづらさを感じたり、人間関係のトラブルに悩まされたりすることがあります。
そこでこの記事では、親子逆転が表面化されにくい理由や、周囲の理解が得られないケースについてお伝えします。
親子逆転とは
親子逆転は、「親」と「子ども」の役割が逆転した状態のことを指す言葉です。
役割の逆転には、目で見てわかりやすい物理面での逆転と、見た目にはわかりにくい精神面での逆転の2種類があります。
物理面での親子逆転というのは、本来なら親が子どもにするはずのことを「子どもが親にしてあげる」ような状態。親に変わって掃除や家事、介護や兄弟姉妹の世話などを日常的に強制させられることなどです。
精神面での親子逆転は、見た目にはわかりません。
子どもの頃に「あれ?」と思うことはあっても、「どの家もこんなものだろう」と納得するしかなかったり、大人になってはじめて「うちは親子逆転だったのでは」と気づいたりすることが多いです。
精神面での親子逆転の例
「精神面での親子逆転」と言われてもイメージが湧きにくい方もいらっしゃると思うので、いくつか例を挙げて説明させていただければと思います。
たとえば、親は子どもを喜ばせたいと思います。
子どもを喜ばせるために、その子が何を好きで、何を求めているのかを知ろうとします。
ですが、親子逆転の場合は違います。
子どもが親を喜ばせなくてはいけません。だから親は、子どもの好きなものや子どもが求めているものを知ろうとしません。その代わりに、親が好きなものや求めているものを子どもに知ってもらおうとします。
子どもは、親の表情や機嫌に敏感になります。そうしないと、親が怒ったり悲しんだり拗ねたり……大変なことになることを知っているからです。
親は子どもを甘えさせます。
子どもの頃に甘えの気持ちを満たしてもらえます。
ですが、親子逆転の場合は違います。
子どもの頃に「甘えたい」という気持ちが満たされないので、大人になっても「親に認めてほしい」という気持ちが消えません。親ではなく、他人にその気持ちが向くこともあります。
さらに厄介なのは、親が子どもに甘えるようなケースです。
「私、こんなに頑張っているのよ」と、子どもに同意や慰めを求めます。思っていたような答えが返ってこないと、怒ったり拗ねたり、その子自身を否定したりします。
親は、子どもの自慢話を「すごいね」と聞くことができます。
子どもの話を聞くことの大切さ、さらには親に認めて褒めてもらうことが「子どもの自信を育てる」ということを知っているからです。
ですが、親子逆転の場合は違います。
子どもの自慢話を否定したり、聞く耳を持ちません。それにもかかわらず、親の自慢話を子どもが「すごいね」と聞かなくてはいけません。本当は聞きたくもないような自慢話や愚痴を、笑顔で聞かなくてはいけません。
親は、子どもの自立を喜びます。
年齢に応じて、子どもへの対応を変化させることができます。成長とともに子どもを信じ、見守り、一人の人間として尊重します。だから、子どもの自立を喜べます。
ですが、親子逆転の場合は違います。
「早く自立しろ」と言いながら、「そんなんじゃ甘い」「あなたには無理」「私の言う通りにしなさい」と自立を邪魔することもあります。子どもが生活の一部になっている場合、子どもを手放すことができません。子どもが自分よりも幸せになることを許せない親もいます。
子どもが親元を離れようとすると、「見捨てるのか」「あなたしかいない」と拒むこともあります。物理的に親元を離れたとしても、「何をしていたのか」「どこに行っていたのか」と干渉の手を緩めないことも多いです。
親に受け入れてもらえない心の傷
子どもが抱える心の不安や悩みについて、解決する手助けをするのが「親」の役割です。
子どもの成長を見守り、励ますのが「親」の役割です。
でも親子逆転は、それらが逆転しています。
小さな頃から、親のために子どもが頑張ります。
親を悲しませないように、不安にならないように、怒らせないように奮闘します。支えになろうとします。
ですが果たして、そのようなことを小さな子どもが出来るでしょうか?親の要求を全て子どもが満たすことができるでしょうか?
……できるわけがないのです。
でも、親子逆転をする親には、そのことがわかりません。
このタイプの親は、自分のことで精一杯で、子どものことを知ろうとしていないからです。
だから、小さな子どもにいろいろなことを求めます。心を育ててもらう時期に、親の欲求を満たすことを求めます。
それも多くの場合は、「完全に」「完璧に」やらないとダメなのです。
すると、子どもは自信を失います。
自分らしさが分からなくなります。
いつも頑張り続けていないと、不安になります。
現実にはできるわけない役割を背負わされているのですが、「できない自分がダメだ」と思わされてしまうのが、親子逆転で育つ子どもなのです。
親子逆転の中で育つ子どもの多くが、「私には何かが足りない」という基本的不安を抱えながら大人になります。
なぜ「親子逆転」は理解されないのか
親子逆転が問題視されにくいのは、「明らかな悪」に見えないケースが多いからです。
子どもにとっては「悪影響」でしかないのですが、それが周囲の人には分かりません。さらに言うなら、子ども自身も自覚しないまま大人になっているケースが大半です。
子どもに親がいないと言うと、多くの人は「かわいそうに」と言うでしょう。
でも、「親子逆転で育ちました」と言ったところで、理解されません。
精神的に支えてくれる親がいないことには代わりないのに、「甘えだ」「親不孝だ」「大人になってまだそんなこと言ってるのか」などと、心無い言葉を浴びせられることもあります。
親に苛められたと言うと、多くの人は「何とひどい親!」「かわいそうに」と言うでしょう。
でも、「親子逆転」の場合は、精神的な面で親から苛められていたとしても、周囲から理解されません。
過干渉・過保護の親の場合、苛められていたどころか「可愛がられていた」という印象を与えることさえあります。
苛められているのに周囲に理解されるどころか、誤解される……それが子どもの心をさらに苦しめてしまいます。
※親子逆転がひどい場合、子ども本人も苛められていると認識していないケースも多いです。結婚して自分が子どもを持ったり、成人してやっと気づくことも珍しくありません。
親子逆転を抱えたまま大人になると…
「ありのままの自分を大切にする」
「そのままの自分に価値がある」
近年このような言葉が聞かれるようになりましたが、これらの感覚は本来、親が子供に与えるものです。
何か出来ても、出来なくても、私は存在していいし、愛されている。私の価値は変わらない。
このように「ありのままの自分」を受け入れてくれるのが、本来の「家庭」であり「親」です。
ですが、親子逆転で育つ子どもの場合は、違います。
親子逆転が起こった家庭では、「ありのままの自分」を受け入れてもらえるどころか否定されたり、「ありのままではダメ。親の思う通りに努力しなければ」と思わされてしまいます。
だから大人になっても、心のどこかにずっと不安があります。
- 「私は誰にも理解されない」
- 「こんな私を好きになってくれるわけがない」
- 「どうせ頑張っても無駄だ」
前向きになろうとしても、ポジティブに考えようとしても、ふとした瞬間にとてつもない不安に襲われます。
親から「ありのままの自分」を受け入れてもらえなかった事実が、大人になっても心を傷つけ続けます。
…それと同時に「自分らしさ」を取り戻したいという気持ちが出てくることがあります。
「だけど本当は理解されたい」
「ありのままの私を好きになってもらいたい」
「私にもできると思いたい」
このような気持ちが出てきた時が、親子逆転の影響から抜け出すチャンスです。
今抱えているあなたの悩みは、あなたの性格のせいでもなければ、あなたの心の問題でもないのかもしれません。
自分のせいではないことが見つかれば、今以上に自分を責めることがなくなり、心や体に現れる不調に悩まされることもなくなっていきます。
カウンセリングなど、自分の気持ちを否定せず受け止めてもらえる場所があれば、話を聞いてもらうのも良いでしょう。親に対する気持ちや、子どもの頃の違和感について、誰かに聞いてもらうだけでも心が楽になることがあります。
そのような場所がないと感じれば、書籍『もしかしてうちの親って、毒親』が悩みを解決する手助けになるはずです。
Poche